脳外傷後のBálint症候群に対するリハビリテーションの経験

「はじめに」日々の臨床の中で我々が稀に接する視覚認知障害の1つにBalint症候群がある. Balint症候群は1909年にBalintにより初めて記載された症候群で, 精神性注視麻痺, 視覚性注意障害, 視覚性運動失調の3徴候からなる1). 精神性注視麻痺は, 視線が視界内の一方向に(または1つの対象物)に固着し, 他の方向を自発的に注視しなくなる症状をいう. また対象物が動く場合, 容易に視野からはずれるためすぐに見失ってしまう. 視覚性注意障害は, 視野内のある1つの対象物を注視するとその周囲にある対象物が認知できなくなることを表す. 検者に促されれば視線の移動は可能であり, 他の対象物...

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Bibliographic Details
Published inリハビリテーション医学 Vol. 43; no. 6; pp. 358 - 364
Main Authors 田中, 博, 笠原, 隆, 豊倉, 穣, 西村, 葉子, 石田, 暉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本リハビリテーション医学会 2006
日本リハビリテーション医学会
Subjects
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ISSN0034-351X
1880-778X
DOI10.2490/jjrm1963.43.358

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Summary:「はじめに」日々の臨床の中で我々が稀に接する視覚認知障害の1つにBalint症候群がある. Balint症候群は1909年にBalintにより初めて記載された症候群で, 精神性注視麻痺, 視覚性注意障害, 視覚性運動失調の3徴候からなる1). 精神性注視麻痺は, 視線が視界内の一方向に(または1つの対象物)に固着し, 他の方向を自発的に注視しなくなる症状をいう. また対象物が動く場合, 容易に視野からはずれるためすぐに見失ってしまう. 視覚性注意障害は, 視野内のある1つの対象物を注視するとその周囲にある対象物が認知できなくなることを表す. 検者に促されれば視線の移動は可能であり, 他の対象物を認知できることからこれら2つの症候の発現には, 何らかの注意機能障害の関与が示唆される2). 健常人が物思いにふけるなどして漠然と外界を見ているときに視線が一方向に固着し, その周辺で物が動いても無関心なことがある. Balint症候群ではこれらが病的に生じ, かつ持続している状態に近いとされる2).
ISSN:0034-351X
1880-778X
DOI:10.2490/jjrm1963.43.358