脳温を指標とした重症くも膜下出血に対する新しい脳保護療法の試み

重症くも膜下出血においては, 一次性および二次性の脳損傷を視野に入れた脳保護療法が必須であり, 低体温療法がその治療法として期待されてきた. しかしながら, 厚生省班会議の成果においてみられるように, 従来の冷却マットを用いた低体温療法では, 必ずしも満足する効果が得られていない8). 中枢神経障害においては, 脳内における炎症性サイトカインが上昇すること, プロスタグランジンの合成に必要な, シクロオキシゲナーゼ(COX)-2の発現が報告されている13). また, 発熱の機序としては, 内因性発熱物質である, インターロイキン1β(IL-1β), 腫瘍壊死因子(TNF-a)などのサイトカイン...

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Published in脳卒中の外科 Vol. 29; no. 5; pp. 335 - 338
Main Authors 松本, 清, 望月, 由武人, 神保, 洋之, 土肥, 謙二, 豊田, 泉, 池田, 幸穂, 小林, 信介, 林, 宗貴
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会 2001
日本脳卒中の外科学会
Subjects
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ISSN0914-5508
1880-4683
DOI10.2335/scs.29.335

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Summary:重症くも膜下出血においては, 一次性および二次性の脳損傷を視野に入れた脳保護療法が必須であり, 低体温療法がその治療法として期待されてきた. しかしながら, 厚生省班会議の成果においてみられるように, 従来の冷却マットを用いた低体温療法では, 必ずしも満足する効果が得られていない8). 中枢神経障害においては, 脳内における炎症性サイトカインが上昇すること, プロスタグランジンの合成に必要な, シクロオキシゲナーゼ(COX)-2の発現が報告されている13). また, 発熱の機序としては, 内因性発熱物質である, インターロイキン1β(IL-1β), 腫瘍壊死因子(TNF-a)などのサイトカインが免疫系の細胞で産生されそれが脳に作用してプロスタグランジンE2(PGE2)の放出を促し, このPGE2が神経に作席して発熱を引き起こすとされる11). 脳内の炎症性サイトカインや, フリーラジカルは, 低温によって発現が抑制される1)9)15). しかし, われわれは, 炎症性サイトカインの発現とそれに伴うプロスタグランジンの発現を薬理学的に直接抑制し, 加えて脳内熱貯留を防止する新しいシステムを開発すれば, 低体温だけに依存することなく脳における炎症作用, 二次的脳損傷を抑制でき, また脳温管理も行えるとの作業仮説をたてた. そこで, くも膜下出血患者において, 炎症性サイトカインの動態と脳温の変化との関連性を検討し, 炎症性サイトカインとプロスタグランジンの産生を抑制できるCOX阻害剤の臨床応用を試みた.
ISSN:0914-5508
1880-4683
DOI:10.2335/scs.29.335