脳波による錯視図形認知に関する生理学的研究

「1. はじめに」1.1 ミュラー・リヤー錯視の行動研究 錯視は対象の大きさ・明るさ・形状などが現実の物理量とは異なって知覚される現象である. 錯視研究の歴史は古く, 本研究で扱う幾何学的錯視も100年以上前からその知覚特性について行動評価研究が進められてきたが, その一方で, その機序については殆ど解明されていない[1]. 他方, 近年, 脳機能に関する多様な研究手法が開発され, 錯視現象の研究に対してもfMRI(機能的磁気共鳴影像)等の脳イメージング手法が導入されるようになってきた[2]. 本研究は, その一基礎研究として, 錯視図形の認知に起因する脳生理反応の時間成分を高分解能脳波計によ...

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Published in感性工学研究論文集:感性工学 Vol. 8; no. 1; pp. 175 - 183
Main Authors 北神, 慎司, 樋脇, 治, 長島, 知正, 野村, 収作, 佐々木, 俊太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本感性工学会 2008
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ISSN1882-8930
1884-5258
DOI10.5057/jjske.8.175

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Summary:「1. はじめに」1.1 ミュラー・リヤー錯視の行動研究 錯視は対象の大きさ・明るさ・形状などが現実の物理量とは異なって知覚される現象である. 錯視研究の歴史は古く, 本研究で扱う幾何学的錯視も100年以上前からその知覚特性について行動評価研究が進められてきたが, その一方で, その機序については殆ど解明されていない[1]. 他方, 近年, 脳機能に関する多様な研究手法が開発され, 錯視現象の研究に対してもfMRI(機能的磁気共鳴影像)等の脳イメージング手法が導入されるようになってきた[2]. 本研究は, その一基礎研究として, 錯視図形の認知に起因する脳生理反応の時間成分を高分解能脳波計により評価した. 本研究では, 幾何学的錯視を引き起こす有名な図形であるミュラー・リヤー図形(図1)を対象とした(以下, 同図形をML図形, またML図形により引き起こされる錯視をML錯視と記述する). ML図形は幾何学的錯視図形の中でも最も良く研究されている錯視であり, 図1左側の外向図形の主線長(L1)は過大視され, 右側の内向図形の主線長(L2)は過小視されることが知られている(これは人間に限らずサル[3]やハト[4]でも起きる).
ISSN:1882-8930
1884-5258
DOI:10.5057/jjske.8.175