エイズ発症阻止に関する研究

米国CDCの統計によれば, 抗HIV薬の単剤投与から2剤併用されるようになった1993年頃からAIDS関連の日和見感染症が減少している. しかし, 2剤併用ではAIDSによる死亡者数まで減少させるには至らなかった. 抗HIV薬を3剤以上併用する治療法は, 強力な抗レトロウイルス療法(highly active anti-retroviral therapy:HAART)と呼ばれ, HIVの増殖をさらに強く抑制できる. HAARTがいち早く導入された米国では1995年後半からAIDSによる死亡者が減少し, わが国でも1年ほどの遅れでその効果が明らかになった. やはり1995年頃, 3つのエポック...

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Published in日本臨床免疫学会会誌 Vol. 25; no. 1; p. 47
Main Author 岩本, 愛吉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床免疫学会 2002
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ISSN0911-4300
1349-7413
DOI10.2177/jsci.25.47

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Summary:米国CDCの統計によれば, 抗HIV薬の単剤投与から2剤併用されるようになった1993年頃からAIDS関連の日和見感染症が減少している. しかし, 2剤併用ではAIDSによる死亡者数まで減少させるには至らなかった. 抗HIV薬を3剤以上併用する治療法は, 強力な抗レトロウイルス療法(highly active anti-retroviral therapy:HAART)と呼ばれ, HIVの増殖をさらに強く抑制できる. HAARTがいち早く導入された米国では1995年後半からAIDSによる死亡者が減少し, わが国でも1年ほどの遅れでその効果が明らかになった. やはり1995年頃, 3つのエポックメーキングな発見がなされている. 第1に, それまでAIDS発症前の潜伏期のように捉えられていた無症候期にもHIVは猛烈に増殖している;第2に, 血漿中のウイルス量(セットポイント)が予後と相関する;第3に, 2~3年のHAARTにより感染宿主の体内からHIVが根絶できるかもしれないという予測が示された. 増殖し続けるHIVが宿主の免疫能をしだいに蝕んでいくのであるから, できるだけ早期にHAARTによる強力な治療を開始すべきであるというのが理論的帰結であり, HIVの治療を語る誰のスライドにも“Hit early, hit hard”の標語が登場していた.
ISSN:0911-4300
1349-7413
DOI:10.2177/jsci.25.47