腹腔内感染症が誘導する臓器障害とその対策:周術期管理からの腸管粘膜防御機構強化の重要性

近年,消化器外科領域では手術手技や周術期管理の進歩とともに治療成績も向上している。一方,縫合不全などの術後腹腔内感染症例での予後は必ずしも改善していない。さらなる成績の向上には病態に沿った周術期管理が重要である。侵襲の大きな手術の周術期には腸管が標的臓器となり,さらに術後腹腔内感染症などが加わると絶食や薬剤の影響により,腸管粘膜防御機構の破錠に加えてDysbiosis状態に陥り,バクテリアルトランスロケーションへと至ることが推測されている。さらに防御機構の破綻は感染部位と異なる肝臓への臓器障害を惹起する可能性がある。そのため腸管粘膜防御機構の強化と共生腸内細菌叢の正常化に主眼をおいたバンドル治...

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Published in日本外科感染症学会雑誌 Vol. 17; no. 2; pp. 82 - 88
Main Authors 田島, 秀浩, 太田, 哲生, 西島, 弘二, 宮下, 知治, 松井, 大輔, 二上, 文夫, 高村, 博之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本外科感染症学会 30.04.2020
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ISSN1349-5755
2434-0103
DOI10.24679/gekakansen.17.2_82

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Summary:近年,消化器外科領域では手術手技や周術期管理の進歩とともに治療成績も向上している。一方,縫合不全などの術後腹腔内感染症例での予後は必ずしも改善していない。さらなる成績の向上には病態に沿った周術期管理が重要である。侵襲の大きな手術の周術期には腸管が標的臓器となり,さらに術後腹腔内感染症などが加わると絶食や薬剤の影響により,腸管粘膜防御機構の破錠に加えてDysbiosis状態に陥り,バクテリアルトランスロケーションへと至ることが推測されている。さらに防御機構の破綻は感染部位と異なる肝臓への臓器障害を惹起する可能性がある。そのため腸管粘膜防御機構の強化と共生腸内細菌叢の正常化に主眼をおいたバンドル治療を行う必要があり,とくにグルタミン+BCAA療法とシンバイオティクス(プロバイオティクスとプレバイオティクス)療法は腸管粘膜バリア機能と腸管免疫機構の保持に有用である。
ISSN:1349-5755
2434-0103
DOI:10.24679/gekakansen.17.2_82