診断が遅延した肘頭脱臼骨折の1例:診断プロセス向上のために

【目的】当院で経験した肘頭骨折とそれに引き続き生じた脱臼の診断遅延を振り返ること.【症例】76歳,女性.統合失調症の既往あり.軽自動車運転中の自損事故,ドクターカーが出動し,救急救命科医が初療にあたった.当院搬送後に精査を受け,総合診療科へ入院した.3日目に当科コンサルト,肘頭骨折と診断した.初日のCTレポートで既に骨折は指摘されていた(この時脱臼は).3日目に術前作図のためレントゲンが撮影され脱臼していたが,翌日に別の整形外科医に指摘されるまで脱臼に対する治療は行われなかった.【考察】要因として,CTレポートの未確認以外に,不適切なレントゲンの撮影部位,不十分なセカンダリーサーベイ,多忙な勤...

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Published in整形外科と災害外科 Vol. 71; no. 1; pp. 19 - 24
Main Author 井上, 三四郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 西日本整形・災害外科学会 25.03.2022
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ISSN0037-1033
1349-4333
DOI10.5035/nishiseisai.71.19

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Summary:【目的】当院で経験した肘頭骨折とそれに引き続き生じた脱臼の診断遅延を振り返ること.【症例】76歳,女性.統合失調症の既往あり.軽自動車運転中の自損事故,ドクターカーが出動し,救急救命科医が初療にあたった.当院搬送後に精査を受け,総合診療科へ入院した.3日目に当科コンサルト,肘頭骨折と診断した.初日のCTレポートで既に骨折は指摘されていた(この時脱臼は).3日目に術前作図のためレントゲンが撮影され脱臼していたが,翌日に別の整形外科医に指摘されるまで脱臼に対する治療は行われなかった.【考察】要因として,CTレポートの未確認以外に,不適切なレントゲンの撮影部位,不十分なセカンダリーサーベイ,多忙な勤務状態,種々の認知バイアス,不十分な監督体制,コミュニケーション不足などが挙げられる.要因は多様であり解決策も多彩であるが,その一つとして多職種連携を挙げたい.
ISSN:0037-1033
1349-4333
DOI:10.5035/nishiseisai.71.19