感染性脳動脈瘤を伴った海綿静脈洞血栓症の1例

症例は66歳の男性.頭痛出現の6日後に内外眼筋麻痺を中心とした多発脳神経障害が急速に進行した.脳MRIでは両側海綿静脈洞が造影不良で血栓化を示唆し,左側では内頸動脈瘤が見られた.髄液では多核球優位に細胞が増多し,糖が減少した.抗凝固薬と抗菌薬を投与し,右海綿静脈洞血栓(CST)は溶解され髄膜炎は改善したが,内頸動脈瘤は増大し大脳皮質に感染性動脈瘤が出現した.抗菌薬継続で動脈瘤は縮小したが,左CSTは溶解されず左内外眼筋麻痺は残存した.CT上,蝶形骨洞上壁に骨の菲薄化と欠損が認められ,同部位を介し蝶形骨洞炎から細菌が海綿静脈洞に波及し血栓化した機序が推定された.細菌は髄膜と内頸動脈にも波及し,生...

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Published in脳卒中 Vol. 32; no. 3; pp. 307 - 313
Main Authors 大西, 洋英, 柳澤, 俊晴, 溝井, 和夫, 華園, 晃, 大川, 聡, 菅原, 正伯, 豊島, 至, 高橋, 聡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脳卒中学会 2010
日本脳卒中学会
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ISSN0912-0726
1883-1923
DOI10.3995/jstroke.32.307

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Summary:症例は66歳の男性.頭痛出現の6日後に内外眼筋麻痺を中心とした多発脳神経障害が急速に進行した.脳MRIでは両側海綿静脈洞が造影不良で血栓化を示唆し,左側では内頸動脈瘤が見られた.髄液では多核球優位に細胞が増多し,糖が減少した.抗凝固薬と抗菌薬を投与し,右海綿静脈洞血栓(CST)は溶解され髄膜炎は改善したが,内頸動脈瘤は増大し大脳皮質に感染性動脈瘤が出現した.抗菌薬継続で動脈瘤は縮小したが,左CSTは溶解されず左内外眼筋麻痺は残存した.CT上,蝶形骨洞上壁に骨の菲薄化と欠損が認められ,同部位を介し蝶形骨洞炎から細菌が海綿静脈洞に波及し血栓化した機序が推定された.細菌は髄膜と内頸動脈にも波及し,生じた内頸動脈瘤は大脳皮質感染性動脈瘤の塞栓源になったと考えられた.抗菌薬が発達した現在CSTは稀とされるが,蝶形骨洞の骨壁異常を持つ者では発症に留意する必要があると考えられた.
ISSN:0912-0726
1883-1923
DOI:10.3995/jstroke.32.307