結核性腹膜炎患者に対する緊急開腹手術の経験:周術期の院内感染対策

結核性腹膜炎は公衆衛生の向上と抗結核薬の進歩による全結核罹患率の低下とともに減少しているが,緊急で外科的治療を要する疾患の1つである。症例は82歳,男性。腹痛,嘔吐を主訴に当院を受診し絞扼性イレウスの診断で緊急開腹手術を施行した。10ヵ月前まで肺結核と結核性腹膜炎に対して内服治療を行っていた。また,ステロイド内服歴と腹部手術歴があった。医療従事者はN95マスクを装着し,通常の手術室で実施した。絞扼の原因は癒着であった。腸間膜に白色の結節を複数触知し,1個を摘出し結核性腹膜炎と確定診断した。術後は感染性のないことを確認し,陰圧室での管理を解除した。一般に結核性腹膜炎に感染力はないとされるが,腹部...

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Published in日本外科感染症学会雑誌 Vol. 18; no. 2; pp. 328 - 331
Main Authors 稲垣, 優, 常光, 洋輔, 吉田, 有佑
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本外科感染症学会 15.12.2021
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ISSN1349-5755
2434-0103
DOI10.24679/gekakansen.18.2_328

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Summary:結核性腹膜炎は公衆衛生の向上と抗結核薬の進歩による全結核罹患率の低下とともに減少しているが,緊急で外科的治療を要する疾患の1つである。症例は82歳,男性。腹痛,嘔吐を主訴に当院を受診し絞扼性イレウスの診断で緊急開腹手術を施行した。10ヵ月前まで肺結核と結核性腹膜炎に対して内服治療を行っていた。また,ステロイド内服歴と腹部手術歴があった。医療従事者はN95マスクを装着し,通常の手術室で実施した。絞扼の原因は癒着であった。腸間膜に白色の結節を複数触知し,1個を摘出し結核性腹膜炎と確定診断した。術後は感染性のないことを確認し,陰圧室での管理を解除した。一般に結核性腹膜炎に感染力はないとされるが,腹部手術中のエアロゾル発生による感染対策は必要である。病歴聴取を怠らないこと,原因不明の腹膜炎症例では結核性腹膜炎を鑑別にあげること,緊急手術時の院内感染対策マニュアルを作成しておくことが必要と思われる。
ISSN:1349-5755
2434-0103
DOI:10.24679/gekakansen.18.2_328