粗視化生体分子シミュレーション法

「1. はじめに」 分子動力学(Molecular Dynamics: MD)シミュレーションは, 生体分子の構造・動態を分析する手法として, 今日, 重要な役割を担っている. そこでの基本は, 全原子を明示的に扱った「全原子(All-Atom: AA)モデル」である. スーパーコンピュータ「富岳」が稼働し始めた今日, その適用範囲は著しく拡大した. しかし生命現象は分子, 細胞, 個体レベルにわたり階層的であり, AAモデルによって解析できない範囲もまた膨大である. その場合, 対象系の規模に応じてモデルを粗視化する「マルチスケールモデリング」が求められる. 近年, 様々な階層のシミュレーシ...

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Published in生物物理 Vol. 61; no. 3; pp. 144 - 151
Main Author 高田, 彰二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2021
日本生物物理学会
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.61.144

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Summary:「1. はじめに」 分子動力学(Molecular Dynamics: MD)シミュレーションは, 生体分子の構造・動態を分析する手法として, 今日, 重要な役割を担っている. そこでの基本は, 全原子を明示的に扱った「全原子(All-Atom: AA)モデル」である. スーパーコンピュータ「富岳」が稼働し始めた今日, その適用範囲は著しく拡大した. しかし生命現象は分子, 細胞, 個体レベルにわたり階層的であり, AAモデルによって解析できない範囲もまた膨大である. その場合, 対象系の規模に応じてモデルを粗視化する「マルチスケールモデリング」が求められる. 近年, 様々な階層のシミュレーションが人気を博している. 本稿では, 粗視化の概念から始めて, 粗視化の基礎理論, 全原子モデルから約1桁粒度を落とした粗視化(Coarse-Grained: CG)モデルを解説する. ここでは粗視化シミュレーションの方法論に焦点を絞り, 具体的な適用例は参考文献に譲る.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.61.144