人工内耳装用の後天性聴覚障害成人例と先天性聴覚障害小児例における音楽知覚の比較検討

要旨: 人工内耳装用の後天性聴覚障害成人 (以下成人) 28名と先天性聴覚障害小児 (以下小児) 34名に対し, 旋律に関連する知覚能力と旋律の識別方略の特徴を検討する目的で, ピッチ識別, 3音のピッチパターン識別, 旋律識別の課題を実施した。その結果, 小児ではピッチ識別, ピッチパターン識別は有意に良好で, 旋律識別は両群共に困難であった。旋律の誤答分析から, 成人では同リズム内での誤答が多くリズムによる識別方略を有効に使用していたと推察されたが, 小児では一定の誤りの傾向は見られず, 課題の旋律がピッチやリズムを主体とした旋律としては学習されていないことが推測された。ピッチ識別は, 重...

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Published inAUDIOLOGY JAPAN Vol. 65; no. 6; pp. 574 - 583
Main Authors 榎本, 千江子, 加藤, 秀敏, 城間, 将江, 加我, 君孝, 小渕, 千絵, 大金, さや香, 原島, 恒夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本聴覚医学会 28.12.2022
日本聴覚医学会
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ISSN0303-8106
1883-7301
DOI10.4295/audiology.65.574

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Summary:要旨: 人工内耳装用の後天性聴覚障害成人 (以下成人) 28名と先天性聴覚障害小児 (以下小児) 34名に対し, 旋律に関連する知覚能力と旋律の識別方略の特徴を検討する目的で, ピッチ識別, 3音のピッチパターン識別, 旋律識別の課題を実施した。その結果, 小児ではピッチ識別, ピッチパターン識別は有意に良好で, 旋律識別は両群共に困難であった。旋律の誤答分析から, 成人では同リズム内での誤答が多くリズムによる識別方略を有効に使用していたと推察されたが, 小児では一定の誤りの傾向は見られず, 課題の旋律がピッチやリズムを主体とした旋律としては学習されていないことが推測された。ピッチ識別は, 重回帰分析により先天性小児期 CI か後天性成人期 CI かの違い, 及び語音弁別能が関与している可能性が示唆された。今後, 旋律知覚のメカニズムの特徴を明らかにし, それぞれの特徴に配慮した音楽の聴取方法や楽しみ方など検証する必要があると考えられた。
ISSN:0303-8106
1883-7301
DOI:10.4295/audiology.65.574