食品のノロウイルス検査の汎用化を目指したパンソルビン・トラップ法の開発

「1. はじめに」平成22年の食中毒統計によると, 全国で1年間に1254例の食中毒事例が発生し, そのうち3割に相当する399例がノロウイルス(NoV)によって引き起こされている(原因物質の第1位). 同様に患者数においても, 全食中毒被害者25,972名の過半数に相当する13,904名がNoVの感染によるものである. このように, ウイルス性食中毒の大部分を占める原因物質がNoVであることが判明しているにもかかわらずカキ以外の一般的な食品からウイルスを検出できた例は非常に少ない. そのため, 原因食品や汚染経路の解明が困難で予防対策においても決め手を欠いているのが実状である. 平成9年に食...

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Published in日本食品微生物学会雑誌 Vol. 29; no. 1; pp. 32 - 37
Main Author 斎藤, 博之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本食品微生物学会 2012
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ISSN1340-8267
1882-5982
DOI10.5803/jsfm.29.32

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Summary:「1. はじめに」平成22年の食中毒統計によると, 全国で1年間に1254例の食中毒事例が発生し, そのうち3割に相当する399例がノロウイルス(NoV)によって引き起こされている(原因物質の第1位). 同様に患者数においても, 全食中毒被害者25,972名の過半数に相当する13,904名がNoVの感染によるものである. このように, ウイルス性食中毒の大部分を占める原因物質がNoVであることが判明しているにもかかわらずカキ以外の一般的な食品からウイルスを検出できた例は非常に少ない. そのため, 原因食品や汚染経路の解明が困難で予防対策においても決め手を欠いているのが実状である. 平成9年に食品衛生法の中に初めてウイルスが登場し, ウイルス性食中毒という概念が確立したのは, 歴史の1つの節目と言える. その後, 糞便検体に対する検査技術は長足の進歩を遂げたものの, 食品検体からのウイルス検出は困難を極め, 「糞便は検査できるが, 食品の検査は難しい」といった状態のまま10年が経過した.
ISSN:1340-8267
1882-5982
DOI:10.5803/jsfm.29.32