急性膵炎の発症と重症化の分子機構

膵腺房細胞内においてaccidentalにトリプシノーゲンからトリプシンへの活性化を生じた場合,通常は,first line defenseとしての膵分泌性トリプシンインヒビター(pancreatic secretory trypsin inhibitor:PSTI)がトリプシン活性を阻害するため,膵腺房細胞障害は惹起されない.ところが,過度の膵腺房細胞刺激によって,PSTIの阻害能を超えたトリプシンの生成が起きると,ひきつづいて生じる連鎖的な諸プロテアーゼの活性化によって膵構成細胞が障害される.これが急性膵炎の主要な発症機構である.また,虚血,自己消化,SIRS/sepsisの三病態が急性膵...

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Published in膵臓 Vol. 21; no. 2; pp. 47 - 55
Main Authors 馬場, 秀夫, 大村谷, 昌樹, 広田, 昌彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本膵臓学会 2006
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ISSN0913-0071
1881-2805
DOI10.2958/suizo.21.47

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Summary:膵腺房細胞内においてaccidentalにトリプシノーゲンからトリプシンへの活性化を生じた場合,通常は,first line defenseとしての膵分泌性トリプシンインヒビター(pancreatic secretory trypsin inhibitor:PSTI)がトリプシン活性を阻害するため,膵腺房細胞障害は惹起されない.ところが,過度の膵腺房細胞刺激によって,PSTIの阻害能を超えたトリプシンの生成が起きると,ひきつづいて生じる連鎖的な諸プロテアーゼの活性化によって膵構成細胞が障害される.これが急性膵炎の主要な発症機構である.また,虚血,自己消化,SIRS/sepsisの三病態が急性膵炎を重症化に導く主要な機構である.トリプシン,トリプシンレセプター(protease-activated receptor-2:PAR-2),サイトカイン,エンドセリンを,上記三病態の発症において中心となる分子として紹介した.
ISSN:0913-0071
1881-2805
DOI:10.2958/suizo.21.47