集学的治療により救命し得た劇症肝不全の1例
肝機能障害が出現し, 急速に増悪, さらに意識障害を伴って急性肝不全に陥る劇症肝不全は致命率が高く, 肝機能障害の重症化, 劇症化が疑われた場合は速やかに肝移植を含む集学的治療を行う必要がある. 一般医家は注意深い観察により肝障害の重症化を予知し, 重症化が疑われたら速やかに専門施設に患者を転送することが望まれる. 日本医科大学付属病院には第一内科, 第三内科, 第一外科に肝臓専門医が, また専門医の協力のもとに血漿交換(PE)や血液濾過透析(HDF)など特殊治療を実施可能な集中治療室があり, 劇症肝不全に対して速やかに対応できる. 今回, 他院で高度の肝機能障害が持続し, 劇症肝不全が疑われ...
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Published in | Journal of Nippon Medical School Vol. 69; no. 4; pp. 390 - 394 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本医科大学医学会
2002
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Online Access | Get full text |
ISSN | 1345-4676 1347-3409 |
DOI | 10.1272/jnms.69.390 |
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Summary: | 肝機能障害が出現し, 急速に増悪, さらに意識障害を伴って急性肝不全に陥る劇症肝不全は致命率が高く, 肝機能障害の重症化, 劇症化が疑われた場合は速やかに肝移植を含む集学的治療を行う必要がある. 一般医家は注意深い観察により肝障害の重症化を予知し, 重症化が疑われたら速やかに専門施設に患者を転送することが望まれる. 日本医科大学付属病院には第一内科, 第三内科, 第一外科に肝臓専門医が, また専門医の協力のもとに血漿交換(PE)や血液濾過透析(HDF)など特殊治療を実施可能な集中治療室があり, 劇症肝不全に対して速やかに対応できる. 今回, 他院で高度の肝機能障害が持続し, 劇症肝不全が疑われたため当科へ転送され, 集中治療室, 第一外科の協力により救命し得た劇症肝不全の一例を経験したので本例の診断から治療までの経過を中心に報告する. 症例は62歳, カラオケ店勤務の女性. 主訴は嘔気, 上腹部痛. 既往歴は20歳で虫垂切除, 45歳頃に肺炎. 姉は62歳で肝細胞癌により, 弟は20歳でアルコール性肝硬変により, それぞれ死亡. 飲酒歴は機会飲酒であり, 輸血歴や喫煙歴はなく, 服薬歴もなかった. 平成14年1月2日より嘔気が出現, 摂食不能となり, 自宅で様子を見ていたが4日上腹部痛が出現したため, 深夜, 近くの病院を受診し, 精査, 治療の為入院となった. 入院後, 嘔気と上腹部痛は改善した. 意識レベルは3-3-9度方式1-1であった("体が軽くなった. 調子はいいです. "と主治医に答えたという). |
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ISSN: | 1345-4676 1347-3409 |
DOI: | 10.1272/jnms.69.390 |