乳がん検診における医療訴訟
裁判所は医療機関側に賠償義務を負わせるか否かを判断するにあたり,(1)「注意義務違反(過失)があるか」,(2)「注意義務違反(過失)と被検者に生じた障害との間に因果関係があるか」,(3)「損害が発生しているか」を検討します。そしてこの三つの要件がすべて認められる場合に賠償義務を負わせる判断を下します。まず,注意義務違反があるとされるのは,悪しき結果が予見でき,かつ,悪しき結果を回避する方法があったにもかかわらず,その措置を怠った場合です。また,医療行為自体に注意義務違反がなくとも,説明が不十分であれば説明義務違反を問われる場合があります。次に,因果関係があるとされるのは,過失ある医療行為によっ...
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Published in | 日本乳癌検診学会誌 Vol. 22; no. 2; pp. 307 - 316 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
特定非営利活動法人 日本乳癌検診学会
20.07.2013
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Subjects | |
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ISSN | 0918-0729 1882-6873 |
DOI | 10.3804/jjabcs.22.307 |
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Summary: | 裁判所は医療機関側に賠償義務を負わせるか否かを判断するにあたり,(1)「注意義務違反(過失)があるか」,(2)「注意義務違反(過失)と被検者に生じた障害との間に因果関係があるか」,(3)「損害が発生しているか」を検討します。そしてこの三つの要件がすべて認められる場合に賠償義務を負わせる判断を下します。まず,注意義務違反があるとされるのは,悪しき結果が予見でき,かつ,悪しき結果を回避する方法があったにもかかわらず,その措置を怠った場合です。また,医療行為自体に注意義務違反がなくとも,説明が不十分であれば説明義務違反を問われる場合があります。次に,因果関係があるとされるのは,過失ある医療行為によって被検者の損害を招いたことが高度の蓋然性をもって認められる場合です。ただし,「死亡」や「重大な後遺障害」の事案では,因果関係の立証が軽減されています。例えば死亡事案では,過失ある医療行為と死亡との間の因果関係が証明できなかったとしても,死亡時点でなお生存していた相当程度の可能性が証明された場合には医療機関側は賠償義務を負うことになります。しかし,その場合に認められる賠償額は低額の慰謝料にとどまります。最後に,損害があるとされるのは,被検者が被ったと主張する損害のうち法律的に認められる損害がある場合です。そして,損害があると認められる場合に支払うべき金額の検討がなされます。 |
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ISSN: | 0918-0729 1882-6873 |
DOI: | 10.3804/jjabcs.22.307 |