胆石と胆嚢がん

要旨:胆石の既往が胆嚢がんのリスクを高めることが以前より知られている.胆嚢がんは他の癌腫と比較して発生数が少ないことより,その疫学研究はあまり進んでおらず,要因の解明も不十分である.本総説では,胆石と胆嚢がんとの関連性について,海外より報告された疫学研究のmeta-analysisの解析結果と,本邦で行われた大規模住民集団の追跡研究である「多目的コホート研究」の検討結果を紹介する.また,胆石の自然史(転帰)についても言及する.無症候性胆石に対する予防的な胆嚢摘出術を施行することは胆嚢がんによる死亡を含めた上で生命予後の改善は認められないとのコンセンサスが得られている.すべての無症候性胆石が胆嚢...

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Published in胆道 Vol. 26; no. 2; pp. 205 - 211
Main Authors 正田, 純一, 川本, 徹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本胆道学会 2012
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ISSN0914-0077
1883-6879
DOI10.11210/tando.26.205

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Summary:要旨:胆石の既往が胆嚢がんのリスクを高めることが以前より知られている.胆嚢がんは他の癌腫と比較して発生数が少ないことより,その疫学研究はあまり進んでおらず,要因の解明も不十分である.本総説では,胆石と胆嚢がんとの関連性について,海外より報告された疫学研究のmeta-analysisの解析結果と,本邦で行われた大規模住民集団の追跡研究である「多目的コホート研究」の検討結果を紹介する.また,胆石の自然史(転帰)についても言及する.無症候性胆石に対する予防的な胆嚢摘出術を施行することは胆嚢がんによる死亡を含めた上で生命予後の改善は認められないとのコンセンサスが得られている.すべての無症候性胆石が胆嚢がんの高危険群ではない.今後は高危険群を絞り込むために,胆石の保有に関連した慢性炎症と持続性の胆道上皮障害の存在を正確に反映するようなバイオマーカーの探索とその開発が望まれる.
ISSN:0914-0077
1883-6879
DOI:10.11210/tando.26.205