胎児期に発見された胸腺成熟奇形腫と単房性胸腺囊胞を合併した新生児の1例

症例は女児.在胎28週時に前縦隔に径14 mmの囊胞性病変を指摘された.その後,大きさや性状に変化は認めなかった.在胎38週1日,体重3,036 gで出生した.CTやMRIにて胸腺右葉下極に囊胞を含む内部不均一な腫瘤を認めたが,この腫瘤は胸腺左葉下極の内部均一な囊胞状腫瘤と正中で接していた.胸腺右葉の奇形腫と,奇形腫が胸腺左葉内に穿破して囊胞を形成したと考えられた.出生直後は無症状であったが,日齢18頃に啼泣時の経皮動脈血酸素飽和度の低下を認めるようになったため,日齢22に手術を行った.胸骨正中切開にて開胸し,胸腺を温存して腫瘤を切除した.病理検査にて右葉の病変は成熟奇形腫であったが,左葉の病...

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Published in日本小児外科学会雑誌 Vol. 56; no. 6; pp. 992 - 997
Main Authors 谷本, 光隆, 野田, 卓男, 谷, 守通, 小谷, 恭弘, 尾山, 貴徳, 納所, 洋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本小児外科学会 20.10.2020
日本小児外科学会
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ISSN0288-609X
2187-4247
DOI10.11164/jjsps.56.6_992

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Summary:症例は女児.在胎28週時に前縦隔に径14 mmの囊胞性病変を指摘された.その後,大きさや性状に変化は認めなかった.在胎38週1日,体重3,036 gで出生した.CTやMRIにて胸腺右葉下極に囊胞を含む内部不均一な腫瘤を認めたが,この腫瘤は胸腺左葉下極の内部均一な囊胞状腫瘤と正中で接していた.胸腺右葉の奇形腫と,奇形腫が胸腺左葉内に穿破して囊胞を形成したと考えられた.出生直後は無症状であったが,日齢18頃に啼泣時の経皮動脈血酸素飽和度の低下を認めるようになったため,日齢22に手術を行った.胸骨正中切開にて開胸し,胸腺を温存して腫瘤を切除した.病理検査にて右葉の病変は成熟奇形腫であったが,左葉の病変は単房性胸腺囊胞と診断され,奇形腫の穿破ではなかった.術後経過は良好である.前縦隔には様々な囊胞状腫瘤が発生するが,両者ともに出生前に指摘されることはほとんどなく,さらに両者を合併した報告はなかった.
ISSN:0288-609X
2187-4247
DOI:10.11164/jjsps.56.6_992