慢性心不全の病態と治療を考える―Back to the Future

心不全の病態 心不全は, 心臓のポンプ機能の低下により臓器, 組織の代謝に応じて十分な血液を駆出出来ず, 身体活動能力が制限されている状態, または種々の循環調節系代償機序により身体活動能力が保持されている臨床病態と定義される. 心不全の病態を形成しているのは, ポンプ機能障害そのものを基軸に, これを代償しようとする心臓血管系自身(Frank-Starling機序), 神経体液性因子, そして肺, 骨格筋, 腎臓, 肝臓, 皮膚などへの血流配分の適応とその破綻と考えることができる1-3. われわれの研究では, 心拍出量低下に伴う臓器血流配分の変化は特に皮膚1, 骨格筋2, 3, 腎臓3で著し...

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Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 71; no. 6; pp. 421 - 425
Main Author 清野, 精彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 2004
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ISSN1345-4676
1347-3409
DOI10.1272/jnms.71.421

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Summary:心不全の病態 心不全は, 心臓のポンプ機能の低下により臓器, 組織の代謝に応じて十分な血液を駆出出来ず, 身体活動能力が制限されている状態, または種々の循環調節系代償機序により身体活動能力が保持されている臨床病態と定義される. 心不全の病態を形成しているのは, ポンプ機能障害そのものを基軸に, これを代償しようとする心臓血管系自身(Frank-Starling機序), 神経体液性因子, そして肺, 骨格筋, 腎臓, 肝臓, 皮膚などへの血流配分の適応とその破綻と考えることができる1-3. われわれの研究では, 心拍出量低下に伴う臓器血流配分の変化は特に皮膚1, 骨格筋2, 3, 腎臓3で著しく, 骨格筋抵抗血管収縮, 容量血管収縮2,3, 血管内皮機能障害(血流依存性血管拡張反応低下)1-3, 皮膚微小循環系vasomotionの異常1, 腎機能障害の予後因子としての重要性3などが明らかにされた. 慢性心不全の初発症状は労作時息切れ, 動悸であることが多く, やがて易疲労感, 全身倦怠感, 浮腫, 睡眠時無呼吸などの全身症状があらわれ, 代償不全に陥ると発作性夜間呼吸困難(心臓喘息), 起坐呼吸などの心不全増悪症状が出現する. 慢性心不全の急性増悪例では, 左室充満圧上昇と肺毛細管圧上昇による肺うっ血, 肺水腫, 起坐呼吸などの症状が特徴的である.
ISSN:1345-4676
1347-3409
DOI:10.1272/jnms.71.421