SLEに合併した肺アスペルギルス症の治療中に発症した肺ムーコル症の1例と本邦報告例の検討

背景.近年,生物学的製剤や免疫抑制薬の使用が増え,それに関連した日和見感染症を診療する機会が多くなっている.ムーコル症も増加傾向にあるが,その診断は困難で,治療薬も限られている.症例.55歳女性.近医でSLEと診断された.ミコフェノール酸モフェチルとステロイドによる治療中に侵襲性肺アスペルギルス症を発症した.ボリコナゾールにより改善したが,同薬継続中に胸部CT検査で両側肺に多発空洞結節が出現し,当院へ紹介となった.経気管支肺生検を施行し,病理組織診でムーコル様構造物を認めた.さらに同検体を用いたPCR検査によりCunninghamella属と高い相同性を有する遺伝子配列が認められ,ムーコル症と...

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Published in気管支学 Vol. 43; no. 3; pp. 249 - 255
Main Authors 大野, 秀明, 小島, 章歳, 森山, 岳, 植松, 和嗣, 菊池, 聡, 平田, 優介, 戸田, 麻衣子, 小林, 由美子, 宮﨑, 義継, 坂井, 浩佑
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会 25.05.2021
日本呼吸器内視鏡学会
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ISSN0287-2137
2186-0149
DOI10.18907/jjsre.43.3_249

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Summary:背景.近年,生物学的製剤や免疫抑制薬の使用が増え,それに関連した日和見感染症を診療する機会が多くなっている.ムーコル症も増加傾向にあるが,その診断は困難で,治療薬も限られている.症例.55歳女性.近医でSLEと診断された.ミコフェノール酸モフェチルとステロイドによる治療中に侵襲性肺アスペルギルス症を発症した.ボリコナゾールにより改善したが,同薬継続中に胸部CT検査で両側肺に多発空洞結節が出現し,当院へ紹介となった.経気管支肺生検を施行し,病理組織診でムーコル様構造物を認めた.さらに同検体を用いたPCR検査によりCunninghamella属と高い相同性を有する遺伝子配列が認められ,ムーコル症と診断された.リポソーム化アムホテリシンB製剤の投与を約3か月継続し,臨床的,画像的な改善を認めた.結論.経気管支肺生検により肺ムーコル症と診断できたことで,病原性の高い菌種であったが,迅速な治療介入と原疾患の管理により良好な転帰を得た.
ISSN:0287-2137
2186-0149
DOI:10.18907/jjsre.43.3_249