輸血用血液の細菌汚染と敗血症

輸血用血液製剤(以下血液製剤)は, 感染症等の多くの項目に対する問診にすべて適合した供血者から採血した血液を原料とし, 閉鎖系で製造される. 採血時には, 血液製剤への細菌の混入を防ぐためにポビドンヨードで穿刺部位(主に肘正中静脈)を中心に適切に消毒を行なう. しかし, 皮膚に適用できる消毒薬は限られていることから穿刺部位全体を完全に消毒することはできない. ウイルス感染症については血清学的な感染症スクリーニング検査やHBV, HCV, HIVに対する核酸増幅検査によって感染血液の大部分が輸血用から除外される. 現在の輸血によるウイルス感染症のリスクは, ウインドウ期間の供血が多数を占め, H...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 54; no. 3; pp. 359 - 371
Main Authors 名雲, 英人, 高橋, 雅彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 2008
日本輸血・細胞治療学会
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ISSN1881-3011
1883-0625
DOI10.3925/jjtc.54.359

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Summary:輸血用血液製剤(以下血液製剤)は, 感染症等の多くの項目に対する問診にすべて適合した供血者から採血した血液を原料とし, 閉鎖系で製造される. 採血時には, 血液製剤への細菌の混入を防ぐためにポビドンヨードで穿刺部位(主に肘正中静脈)を中心に適切に消毒を行なう. しかし, 皮膚に適用できる消毒薬は限られていることから穿刺部位全体を完全に消毒することはできない. ウイルス感染症については血清学的な感染症スクリーニング検査やHBV, HCV, HIVに対する核酸増幅検査によって感染血液の大部分が輸血用から除外される. 現在の輸血によるウイルス感染症のリスクは, ウインドウ期間の供血が多数を占め, HBV, HCV, HIVの50pool-NAT下(現在は20pool-NAT)でのウインドウ期に献血される理論的リスクは, それぞれ年間に約100回, 約1回, 約0.5回と推定されている1). 海外でも1970年代以降, ウイルスに対する安全対策が講じられ, 現在では細菌の伝播リスクはウイルスの伝播リスクを上回り輸血のリスクという観点からクローズアップされている. 特に血小板輸血での細菌感染リスクはHCV, HTLV, HIV感染より10~1,000倍高い2). 本稿では, 輸血による敗血症を中心に解説するとともに, その低滅化対策についても言及した.
ISSN:1881-3011
1883-0625
DOI:10.3925/jjtc.54.359