膵炎とオートファジー

オートファジーとは,二重膜構造のオートファゴソームが細胞質の一部または細胞内小器官を取り囲み,リソソームと融合することでその内容物をリソソーム酵素によって分解する系である.遺伝子改変マウスを用いた研究から,急性膵炎だけでなく慢性膵炎の発症にもオートファジーが深く関与していることが判ってきた.慢性膵炎では,飢餓で誘導される正常なオートファゴソームよりも巨大な空胞の出現とオートファジーの選択的基質p62/SQSTM1(p62)タンパク質の異常蓄積が見られることから,オートファジー不全がその発症に深く関わっている可能性がある.p62はオートファジーの選択的基質であるだけでなく,シグナル伝達,細胞増殖...

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Published in膵臓 Vol. 29; no. 1; pp. 32 - 37
Main Author 大村谷, 昌樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本膵臓学会 2014
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ISSN0913-0071
1881-2805
DOI10.2958/suizo.29.32

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Summary:オートファジーとは,二重膜構造のオートファゴソームが細胞質の一部または細胞内小器官を取り囲み,リソソームと融合することでその内容物をリソソーム酵素によって分解する系である.遺伝子改変マウスを用いた研究から,急性膵炎だけでなく慢性膵炎の発症にもオートファジーが深く関与していることが判ってきた.慢性膵炎では,飢餓で誘導される正常なオートファゴソームよりも巨大な空胞の出現とオートファジーの選択的基質p62/SQSTM1(p62)タンパク質の異常蓄積が見られることから,オートファジー不全がその発症に深く関わっている可能性がある.p62はオートファジーの選択的基質であるだけでなく,シグナル伝達,細胞増殖,細胞死,炎症,腫瘍形成および酸化ストレス応答など多彩な機能を有しているため,p62タンパク質の異常蓄積が慢性膵炎発症のメカニズムとして注目されている.
ISSN:0913-0071
1881-2805
DOI:10.2958/suizo.29.32