遺伝子解析でIPMNの経膵管播種が強く疑われた十二指腸乳頭部高分化型腺癌の1例

組織学的に胃型形質を有する十二指腸乳頭部癌と診断されたが,遺伝子解析にて膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)からの播種が強く疑われた症例を経験したので報告する.症例は,80歳代男性で主訴は黄疸.内視鏡検査で乳頭部は全体的に腫大し,近傍十二指腸壁は進展不良であった.経乳頭的生検で腺癌と診断され,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術が施行された.病理学的に乳頭部上皮は異型の乏しい,MUC5AC,MUC6陽性,SMAD4陰性の腫瘍で置換され,腫瘍のびまん性浸潤性増殖が十二指腸壁や膵頭部に認められた.近傍の分枝膵管内にはIPMCが認められ,乳頭部癌との連続性はなかったが,遺伝子解析の結果,両病変ともにKRAS G...

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Published in胆道 Vol. 35; no. 1; pp. 92 - 99
Main Authors 古川, 徹, 北川, 裕久, 椎原, 正尋, 廣瀬, 勝也, 橋田, 和樹, 山川, 達也, 石田, 悦嗣, 河本, 和幸, 大森, 優子, 能登原, 憲司, 赤池, 瑶子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本胆道学会 31.03.2021
Subjects
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ISSN0914-0077
1883-6879
DOI10.11210/tando.35.92

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Summary:組織学的に胃型形質を有する十二指腸乳頭部癌と診断されたが,遺伝子解析にて膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)からの播種が強く疑われた症例を経験したので報告する.症例は,80歳代男性で主訴は黄疸.内視鏡検査で乳頭部は全体的に腫大し,近傍十二指腸壁は進展不良であった.経乳頭的生検で腺癌と診断され,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術が施行された.病理学的に乳頭部上皮は異型の乏しい,MUC5AC,MUC6陽性,SMAD4陰性の腫瘍で置換され,腫瘍のびまん性浸潤性増殖が十二指腸壁や膵頭部に認められた.近傍の分枝膵管内にはIPMCが認められ,乳頭部癌との連続性はなかったが,遺伝子解析の結果,両病変ともにKRAS G13D,GNAS R201H変異が検出され,同一病変であることが強く示唆された.乳頭部癌はIPMCが乳頭開口部粘膜に膵管内播種をきたし,浸潤性に発育したものと考えられた.
ISSN:0914-0077
1883-6879
DOI:10.11210/tando.35.92