不規則抗体スクリーニング赤血球試薬のDTT処理後の赤血球抗原保存性の検討
Daratumumab(DARA)は多発性骨髄腫の骨髄腫細胞に多く発現しているCD38に特異的に結合し治療効果を認める薬剤である.CD38はヒト赤血球表面上に発現しており,DARA投与後の血清を用いた不規則抗体スクリーニングや交差適合試験では汎凝集反応を呈することが判っている.今回の検討はDARAの非特異反応を回避し,かつジチオスレイトール(Dithiothreitol:DTT)により臨床的に問題となる抗原が変性しない至適濃度について検討した.次いで,DTT処理したスクリーニング赤血球試薬の保存について併せて検討を行った.方法:DTT濃度とDTTを溶解するリン酸緩衝生理食塩液(PBS)のpHを...
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Published in | 日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 65; no. 5; pp. 800 - 809 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
25.10.2019
日本輸血・細胞治療学会 |
Subjects | |
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ISSN | 1881-3011 1883-0625 |
DOI | 10.3925/jjtc.65.800 |
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Summary: | Daratumumab(DARA)は多発性骨髄腫の骨髄腫細胞に多く発現しているCD38に特異的に結合し治療効果を認める薬剤である.CD38はヒト赤血球表面上に発現しており,DARA投与後の血清を用いた不規則抗体スクリーニングや交差適合試験では汎凝集反応を呈することが判っている.今回の検討はDARAの非特異反応を回避し,かつジチオスレイトール(Dithiothreitol:DTT)により臨床的に問題となる抗原が変性しない至適濃度について検討した.次いで,DTT処理したスクリーニング赤血球試薬の保存について併せて検討を行った.方法:DTT濃度とDTTを溶解するリン酸緩衝生理食塩液(PBS)のpHを調整し,至適な条件を設定した.また調製後のDTT処理赤血球の保存性について血清学的および光学的に抗原反応性を確認した.結果:DTT濃度の至適濃度は0.01mol/l,DTTを溶解するPBSはpH7.0以上であれば問題なくCD38の変性が確認できた.同時にKell血液型抗原についてはやや抗原性は低下するが検出は可能であった.DTT処理赤血球の保存性については,DTT処理後28日目であっても主要抗原の抗原性は確認できた.考察:DTT処理赤血球試薬の調製は都度実施するのが煩雑である.不規則抗体スクリーニング赤血球試薬をDTT処理後,保存が可能であれば,検査室で都度のDTT処理の作業が軽減でき,効率の良い検査が可能である. |
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ISSN: | 1881-3011 1883-0625 |
DOI: | 10.3925/jjtc.65.800 |