大量出血に対するフィブリノゲン製剤のエビデンスと今後の展開

「はじめに」近年, わが国でもようやく大量出血時における止血目的の輸血治療の重要性が認識されるようになり, クリオプレシピテートやフィブリノゲン製剤を使用する医療機関が増えてきた. しかし, この両製剤が必要とされる病態は一様ではなく, 適応や使用実態, 投与効果についても明確とはなっていない. しかも後天的な大量出血に対するフィブリノゲン製剤の保険適用は認められておらず, 過去のウィルス感染事故のトラウマから, その薬事承認には高いハードルがある. 現在多くの医療機関がやむなく自施設でクリオプレシピテートを作製し使用しているが, フィブリノゲン含有量が一定しない, 新鮮凍結血漿(以下, FF...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 63; no. 4; pp. 625 - 629
Main Authors 松永, 茂剛, 今井, 厚子, 澤野, 誠, 山本, 晃士, 阿南, 昌弘, 大木, 浩子, 前田, 平生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 31.08.2017
日本輸血・細胞治療学会
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ISSN1881-3011
1883-0625
DOI10.3925/jjtc.63.625

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Summary:「はじめに」近年, わが国でもようやく大量出血時における止血目的の輸血治療の重要性が認識されるようになり, クリオプレシピテートやフィブリノゲン製剤を使用する医療機関が増えてきた. しかし, この両製剤が必要とされる病態は一様ではなく, 適応や使用実態, 投与効果についても明確とはなっていない. しかも後天的な大量出血に対するフィブリノゲン製剤の保険適用は認められておらず, 過去のウィルス感染事故のトラウマから, その薬事承認には高いハードルがある. 現在多くの医療機関がやむなく自施設でクリオプレシピテートを作製し使用しているが, フィブリノゲン含有量が一定しない, 新鮮凍結血漿(以下, FFP)の使用量として膨大となる, 輸血関連急性肺障害を始めとした有害事象のリスクがある, 等のデメリットに目をつぶり, 相当な労力を要して運用している現実がある. 本稿では, 種々の領域での大量出血症例に対して投与されているフィブリノゲン製剤の有効性に関し, 現在までのエビデンスに基づいて考察するとともに, わが国におけるリアルワールドでの治療の実態と投与効果について紹介し, 本製剤の今後の展開について考える.
ISSN:1881-3011
1883-0625
DOI:10.3925/jjtc.63.625