色素細胞含有培養表皮の移植経過の研究

目的:培養表皮は侵襲性も少なく,広範囲尋常性白斑の治療に有効な医療技術である。しかし,従来の培養技術では,表皮細胞培養時に混入している色素細胞を維持しているに過ぎないため,移植後の結果も安定しない。そこで我々は色素細胞含有量を調整できる培養技術を確立し,今回この色素細胞含有培養表皮の生体への生着性と遺残性について検討した。 方法:培養表皮細胞の調製過程において,播種表皮細胞数を基準に色素細胞混合量を調整して培養表皮を作製した。得られた表皮細胞シートを,免疫不全マウスの皮下に移植した。2週間後,3か月後の組織を採取し,病理学的検討を行った。 結果:着色した移植表皮の生着が,2週間後に確認された。...

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Published in聖マリアンナ医科大学雑誌 Vol. 49; no. 3; pp. 83 - 93
Main Authors 住江, 玲奈, 井上, 肇, 鍋島, 諒大, 武内, 嵩幸, 友近, 真世, 梶川, 明義, 久保田, 学
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会 2021
聖マリアンナ医科大学医学会
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ISSN0387-2289
2189-0285
DOI10.14963/stmari.49.83

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Summary:目的:培養表皮は侵襲性も少なく,広範囲尋常性白斑の治療に有効な医療技術である。しかし,従来の培養技術では,表皮細胞培養時に混入している色素細胞を維持しているに過ぎないため,移植後の結果も安定しない。そこで我々は色素細胞含有量を調整できる培養技術を確立し,今回この色素細胞含有培養表皮の生体への生着性と遺残性について検討した。 方法:培養表皮細胞の調製過程において,播種表皮細胞数を基準に色素細胞混合量を調整して培養表皮を作製した。得られた表皮細胞シートを,免疫不全マウスの皮下に移植した。2週間後,3か月後の組織を採取し,病理学的検討を行った。 結果:着色した移植表皮の生着が,2週間後に確認された。また組織学的にも,HE染色で培養表皮の生着を認めた。この生着培養表皮は,Melan-A陽性の色素細胞を認め,ギムザ染色でメラニン顆粒の存在も確認できた。移植後の培養表皮中の色素細胞数は色素細胞の混入比率に応じて変化した。また移植3か月後に採取した組織においても,培養表皮の生着およびメラニン顆粒を含む色素細胞が確認された。この移植表皮中の色素細胞は,3か月後においてDopa反応が陽性であった。 結語:色素細胞含有率を調整した培養表皮は生体において生着し,長期的にも色素細胞の残存および機能の維持がされていることが示された。今後,尋常性白斑などによりカラーマッチの優れた治療を提供できる可能性がある。
ISSN:0387-2289
2189-0285
DOI:10.14963/stmari.49.83