膵癌に対する低侵襲膵切除術

膵癌における低侵襲手術(MIS)の難度は高く,導入時の安全性に対する懸念があった.その後,2016年に腹腔鏡下膵体尾部切除術(LDP)が悪性疾患にも適応拡大となり,2020年にはリンパ節郭清を伴う腹腔鏡下・ロボット支援下膵頭十二指腸切除術(LPD・RPD)が保険収載された.膵癌は予後不良な疾患であるが,他の固形癌と違わずその最も有効な治療介入は外科的根治切除である.しかし切除可能膵癌においてもその予後改善には術前・術後治療が重要であることから,膵癌外科治療は患者への負担軽減のため,出血が少なく極力機能を温存したR0切除が望まれる.内視鏡外科手術では,高画質映像にて認識可能な微細な解剖構造のもと...

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Published in膵臓 Vol. 36; no. 5; pp. 307 - 314
Main Authors 瀧下, 智恵, 中川, 暢彦, 土田, 明彦, 小薗, 真吾, 鈴木, 健太, 永川, 裕一, 中川, 直哉, 勝又, 健次, 刑部, 弘哲
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本膵臓学会 30.10.2021
日本膵臓学会
Subjects
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ISSN0913-0071
1881-2805
DOI10.2958/suizo.36.307

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Summary:膵癌における低侵襲手術(MIS)の難度は高く,導入時の安全性に対する懸念があった.その後,2016年に腹腔鏡下膵体尾部切除術(LDP)が悪性疾患にも適応拡大となり,2020年にはリンパ節郭清を伴う腹腔鏡下・ロボット支援下膵頭十二指腸切除術(LPD・RPD)が保険収載された.膵癌は予後不良な疾患であるが,他の固形癌と違わずその最も有効な治療介入は外科的根治切除である.しかし切除可能膵癌においてもその予後改善には術前・術後治療が重要であることから,膵癌外科治療は患者への負担軽減のため,出血が少なく極力機能を温存したR0切除が望まれる.内視鏡外科手術では,高画質映像にて認識可能な微細な解剖構造のもと極めて繊細な切除を可能とし,出血が少なく,肉眼では見ることのできない正確な層や神経・線維組織の構造を認識した切除が可能となる.今後は,MISで得られる拡大視効果を享受した新たな膵切除の開発が期待される.
ISSN:0913-0071
1881-2805
DOI:10.2958/suizo.36.307