痛みに対する心理的アプローチ

慢性疼痛のなかには心理的な要因の関連が疑われるものも認められる. 我々心療内科医は, 主に他診療科から以下のようなことを期待され, 慢性疼痛患者を紹介される. (1)痛みのうち身体的要因と心理的要因を判別すること, (2)他の精神疾患の有無や痛みとの関連, (3)「手のかかる患者」の主治医となること. 慢性疼痛の心理的側面に関して, これまでに何度かの変遷が認められる. 1970年代中ごろまでは, 慢性疼痛は「情緒的要因によって起こった痛み」という理解が主流であった. しかし, 「情緒的要因によって起こったかどうか」の判断は臨床医にゆだねられていた. 即ち, 診断基準が専門医の臨床経験に任され...

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Published in心身健康科学 Vol. 4; no. 1; pp. 7 - 9
Main Author 村林, 信行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心身健康科学会 2008
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ISSN1882-6881
1882-689X
DOI10.11427/jhas.4.7

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Summary:慢性疼痛のなかには心理的な要因の関連が疑われるものも認められる. 我々心療内科医は, 主に他診療科から以下のようなことを期待され, 慢性疼痛患者を紹介される. (1)痛みのうち身体的要因と心理的要因を判別すること, (2)他の精神疾患の有無や痛みとの関連, (3)「手のかかる患者」の主治医となること. 慢性疼痛の心理的側面に関して, これまでに何度かの変遷が認められる. 1970年代中ごろまでは, 慢性疼痛は「情緒的要因によって起こった痛み」という理解が主流であった. しかし, 「情緒的要因によって起こったかどうか」の判断は臨床医にゆだねられていた. 即ち, 診断基準が専門医の臨床経験に任されていた時代ということができる. この時代は精神分析が全盛の時代でもあり, 痛みは転換ヒステリーとの関連で理解されることも多かった. 1980年代, 精神医学を精神分析から脱出させる目的で作成されたDSM-IIIでは, Psychogenic Pain Disorderという診断名が誕生した.
ISSN:1882-6881
1882-689X
DOI:10.11427/jhas.4.7