鼠径管転移を認めた膵癌の1例

症例は74歳の女性.2013年2月膵体部癌に対し膵体尾部切除,D2郭清を施行した.病理組織学的診断は高分化腺癌,T3N0M0 pStage IIA(JPS 7th)であった.術後補助化学療法としてS-1を6か月投与した.2015年2月CTで左鼠径部に24mm大の腫瘤を認め,FDG-PETで同部位に集積を認めた.他に転移を示唆する所見を認めなかったため,左鼠径部腫瘤摘出術を施行した.術中明らかな鼠径ヘルニアを認めなかった.病理組織学的診断は膵癌の鼠径管転移であった.2017年8月に肺炎で亡くなるまで膵体尾部切除後4年6か月,鼠径部腫瘍摘出後2年5か月無再発であった.膵癌の鼠径管への転移様式として...

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Published in膵臓 Vol. 33; no. 5; pp. 841 - 846
Main Authors 雨宮, 隆介, 陳, 凌風, 柳, 在勲, 早津, 成夫, 上畠, 篤, 原, 彰男, 津和野, 伸一, 江頭, 有美, 石塚, 裕人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本膵臓学会 25.10.2018
Subjects
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ISSN0913-0071
1881-2805
DOI10.2958/suizo.33.841

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Summary:症例は74歳の女性.2013年2月膵体部癌に対し膵体尾部切除,D2郭清を施行した.病理組織学的診断は高分化腺癌,T3N0M0 pStage IIA(JPS 7th)であった.術後補助化学療法としてS-1を6か月投与した.2015年2月CTで左鼠径部に24mm大の腫瘤を認め,FDG-PETで同部位に集積を認めた.他に転移を示唆する所見を認めなかったため,左鼠径部腫瘤摘出術を施行した.術中明らかな鼠径ヘルニアを認めなかった.病理組織学的診断は膵癌の鼠径管転移であった.2017年8月に肺炎で亡くなるまで膵体尾部切除後4年6か月,鼠径部腫瘍摘出後2年5か月無再発であった.膵癌の鼠径管への転移様式としては鼠径ヘルニア嚢への転移と精索/子宮円索転移が考えられるが,女性における子宮円索転移の報告例はない.本症例はヘルニア嚢の存在しない,女性膵癌の鼠径管転移例であり,極めて稀と考えられた.
ISSN:0913-0071
1881-2805
DOI:10.2958/suizo.33.841