BALによって生じた外傷性肺囊胞の1例

背景.外傷性肺囊胞は鈍的外傷による気道内圧の上昇を契機に発生する囊胞性病変であり,交通外傷によるものが多く知られている.多くが自然経過で縮小するものの,確実な治療法が確立されておらず,拡大傾向の場合の対処は明らかでない.症例.66歳女性,特発性肺線維症と診断し,副腎皮質ホルモンと免疫抑制剤を服用したにも関わらず,急性増悪を来たし入院となった.急性増悪の原因診断のため気管支鏡下に気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage:BAL)を施行した.BAL後に気胸が発生し,その後,囊胞が出現したため,BALによる外傷性肺囊胞が疑われた.囊胞が拡大し,それに伴い呼吸困難が悪化したため,チ...

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Published in気管支学 Vol. 45; no. 6; pp. 391 - 397
Main Authors 齋藤, 武文, 渡邊, 安祐美, 大石, 修司, 林原, 賢治, 金澤, 潤, 中川, 隆行, 野中, 水, 石井, 幸雄, 兵頭, 健太郎, 南, 優子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会 25.11.2023
日本呼吸器内視鏡学会
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ISSN0287-2137
2186-0149
DOI10.18907/jjsre.45.6_391

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Summary:背景.外傷性肺囊胞は鈍的外傷による気道内圧の上昇を契機に発生する囊胞性病変であり,交通外傷によるものが多く知られている.多くが自然経過で縮小するものの,確実な治療法が確立されておらず,拡大傾向の場合の対処は明らかでない.症例.66歳女性,特発性肺線維症と診断し,副腎皮質ホルモンと免疫抑制剤を服用したにも関わらず,急性増悪を来たし入院となった.急性増悪の原因診断のため気管支鏡下に気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage:BAL)を施行した.BAL後に気胸が発生し,その後,囊胞が出現したため,BALによる外傷性肺囊胞が疑われた.囊胞が拡大し,それに伴い呼吸困難が悪化したため,チェックバルブが増悪の原因と考え,責任気管支にendobronchial Watanabe spigot:EWSを用いた気管支充填術を施行し,一過性ではあるものの囊胞の縮小が認められ,呼吸困難が軽快した.結論.本結果は,進行性に拡大する肺囊胞に対して外科的切除が不可能な場合,気管支充填術が奏効する可能性を示唆するものである.責任気管支の特定と充填材料の特性について,さらなる研究が必要である.
ISSN:0287-2137
2186-0149
DOI:10.18907/jjsre.45.6_391