本邦における低侵襲膵切除術の現状と今後の課題

膵切除術は侵襲の大きな手術で,これは膵臓の解剖学的・生理学的・病理学的特徴によっている.侵襲を軽減するために,膵実質の切除範囲を縮小し十二指腸・脾臓など周辺臓器を温存する取り組みがされてきた.さらに,諸外国では腹腔鏡下膵切除術が1990年代から行われるようになり,2000年頃にはロボット支援下膵切除術が試みられるようになった.一方,本邦では2012年に腹腔鏡下膵切除術の一部が保険適用となり,2020年からは腹腔鏡下膵切除術において手術支援ロボットの使用が保険適用となった.これまでわが国の先達は,優れた外科手術手技により,世界の低侵襲膵切除術の発展をリードしてきたが,近年では保険適用の遅れなどの...

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Published in膵臓 Vol. 36; no. 5; pp. 287 - 292
Main Author 高折, 恭一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本膵臓学会 30.10.2021
日本膵臓学会
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ISSN0913-0071
1881-2805
DOI10.2958/suizo.36.287

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Summary:膵切除術は侵襲の大きな手術で,これは膵臓の解剖学的・生理学的・病理学的特徴によっている.侵襲を軽減するために,膵実質の切除範囲を縮小し十二指腸・脾臓など周辺臓器を温存する取り組みがされてきた.さらに,諸外国では腹腔鏡下膵切除術が1990年代から行われるようになり,2000年頃にはロボット支援下膵切除術が試みられるようになった.一方,本邦では2012年に腹腔鏡下膵切除術の一部が保険適用となり,2020年からは腹腔鏡下膵切除術において手術支援ロボットの使用が保険適用となった.これまでわが国の先達は,優れた外科手術手技により,世界の低侵襲膵切除術の発展をリードしてきたが,近年では保険適用の遅れなどのため諸外国の後塵を拝している.しかし,外科医の教育体制を充実させることにより,本邦でも低侵襲膵切除術を安全に広く提供することは可能である.ロボット支援下手術に対応した教育体制の整備が喫緊の課題となる.
ISSN:0913-0071
1881-2805
DOI:10.2958/suizo.36.287