Head-up tilt試験によってのみ誘発されるカテーテル治療抵抗性心房頻拍の1例

症例は,特に既往歴のない69歳男性.胸部圧迫感を伴う薬剤抵抗性発作性心房細動に対して,肺静脈隔離,上大静脈隔離,下大静脈三尖弁輪峡部アブレーションを施行された.退院10ヵ月後に,飲酒後,胸部圧迫感に引き続き失神,転倒をきたし顔面を負傷した.その1週間前に施行されたホルター心電図では,心拍数180bpmの無症候性心房頻拍(atrial tachycardia : AT)が複数回記録されており,ATの治療目的に2回目のカテーテルアブレーションを施行した.右房起源の複数のATが誘発されたが,ATの最早期である右房低位中隔,右房側壁へ通電を行った後は,イソプロテレノールを負荷下に頻拍誘発を行っても心房...

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Published in心電図 Vol. 37; no. 3; pp. 180 - 185
Main Authors 合屋, 雅彦, 前田, 真吾, 西村, 卓郎, 潮平, 親哉, 佐々木, 毅, 笹野, 哲郎, 平尾, 見三, 吉竹, 貴克, 川端, 美穂子, 白井, 康大
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本不整脈心電学会 02.11.2017
日本不整脈心電学会
Subjects
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ISSN0285-1660
1884-2437
DOI10.5105/jse.37.180

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Summary:症例は,特に既往歴のない69歳男性.胸部圧迫感を伴う薬剤抵抗性発作性心房細動に対して,肺静脈隔離,上大静脈隔離,下大静脈三尖弁輪峡部アブレーションを施行された.退院10ヵ月後に,飲酒後,胸部圧迫感に引き続き失神,転倒をきたし顔面を負傷した.その1週間前に施行されたホルター心電図では,心拍数180bpmの無症候性心房頻拍(atrial tachycardia : AT)が複数回記録されており,ATの治療目的に2回目のカテーテルアブレーションを施行した.右房起源の複数のATが誘発されたが,ATの最早期である右房低位中隔,右房側壁へ通電を行った後は,イソプロテレノールを負荷下に頻拍誘発を行っても心房不整脈は誘発されず,手技を終了した.しかし,術後3日目に施行したhead-up tilt(HUT)試験では,イソプロテレノール負荷下に血圧の低下に伴って胸部圧迫感を伴う上室期外収縮(premature atrial contraction : PAC)の散発を認め,その後,心拍数250bpmのATが発生し,同時に痙攣を伴って失神をきたした.速やかに患者を臥位にすると,頻拍は自然停止し,意識は回復した.その後,PACはまったく観察されなかった.カテーテル室では誘発不能であった非肺静脈起源ATがHUT試験で誘発され,頻脈性ATと血管抑制型迷走神経反射が合併して初めて失神をきたした稀有な症例であり,文献的考察を含めて報告する.
ISSN:0285-1660
1884-2437
DOI:10.5105/jse.37.180