環境保健研究のジレンマ

「1. はじめに」環境保健はヒトの健康と環境の相互作用を解明する一学術分野である. 環境中に存在する有害因子(以下, 環境有害因子)には, 化学物質の曝露だけでなく, 廃棄物汚染, 越境汚染, 地球(および生活)環境変化に伴う温暖化(暑熱, 洪水・ゲリラ豪雨, 生物媒介感染症の拡大)や紫外線照射などが含まれる. これらがヒトの健康にどのような/どのように影響を与えるが環境保健の主たる研究目的であり, 途上国では金属鉱山・採掘や農薬撒布による健康リスクに関する研究が盛んにおこなわれているが, 先進国では環境による小児への健康影響に関心が向けられている. 1970年代後半に鉛による健康影響に関する...

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Published in日本衛生学雑誌 Vol. 73; no. 2; pp. 148 - 155
Main Authors 村田, 勝敬, 岩田, 豊人, 苅田, 香苗, 前田, 恵理
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人日本衛生学会 2018
日本衛生学会
Subjects
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ISSN0021-5082
1882-6482
DOI10.1265/jjh.73.148

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Summary:「1. はじめに」環境保健はヒトの健康と環境の相互作用を解明する一学術分野である. 環境中に存在する有害因子(以下, 環境有害因子)には, 化学物質の曝露だけでなく, 廃棄物汚染, 越境汚染, 地球(および生活)環境変化に伴う温暖化(暑熱, 洪水・ゲリラ豪雨, 生物媒介感染症の拡大)や紫外線照射などが含まれる. これらがヒトの健康にどのような/どのように影響を与えるが環境保健の主たる研究目的であり, 途上国では金属鉱山・採掘や農薬撒布による健康リスクに関する研究が盛んにおこなわれているが, 先進国では環境による小児への健康影響に関心が向けられている. 1970年代後半に鉛による健康影響に関する論文が産業保健専門誌に多数掲載されるようになり, 世界保健機関(WHO)は1984年に水道水中の鉛指針値(WHO guideline value)を50μg/Lとした. 1993年には, この指針値を一気に10μg/Lに下げた(わが国の鉛の水質基準を50μg/L以下にしたのは1992年, 10μg/L以下になったのは2004年である).
ISSN:0021-5082
1882-6482
DOI:10.1265/jjh.73.148