インフォームド・コンセント成立の背景について
患者の自律を規範とするインフォームドコンセントは, 世界医師会のヘルシンキ宣言にあるように医療において重要な位置を占める. ヘルシンキ宣言は1964年に成立し, 5回の改訂を経て2000年に現行版となった. しかし, 「「有効な方法がある場合はプラセボが使用できない規定」と『被験者への継続した優遇措置』を改めよ」という要求を突きつけられた. これは, 有効な治療法があるにもかかわらず, 欧米ではプラセボ対照試験が一般的という事情がある. 2002年に「有効な治療法があっても, 条件によってはプラセボ対照試験を行える」との脚注が加えられたが, その妥協はヘルシンキ宣言の意図を歪めるとの批判があり...
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| Published in | 山口医学 Vol. 53; no. 2; pp. 89 - 97 |
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| Main Author | |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
山口大学医学会
2004
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| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0513-1731 1880-4462 |
| DOI | 10.2342/ymj.53.89 |
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| Summary: | 患者の自律を規範とするインフォームドコンセントは, 世界医師会のヘルシンキ宣言にあるように医療において重要な位置を占める. ヘルシンキ宣言は1964年に成立し, 5回の改訂を経て2000年に現行版となった. しかし, 「「有効な方法がある場合はプラセボが使用できない規定」と『被験者への継続した優遇措置』を改めよ」という要求を突きつけられた. これは, 有効な治療法があるにもかかわらず, 欧米ではプラセボ対照試験が一般的という事情がある. 2002年に「有効な治療法があっても, 条件によってはプラセボ対照試験を行える」との脚注が加えられたが, その妥協はヘルシンキ宣言の意図を歪めるとの批判があり, 2003年時点で最終決定できないでいる. 一方, 1999年のペンシルバニア大学で被験者が死亡した遺伝子治療事例の調査では, 臨床試験推進が優先されてインフォームドコンセントのルールが無視され, 監視機構も機能不全状態で被験者の安全がおろそかにされた経緯が明らかになった1). |
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| ISSN: | 0513-1731 1880-4462 |
| DOI: | 10.2342/ymj.53.89 |