不規則抗体保有のDaratumumab投与患者から学ぶ,酵素法の有用性

多発性骨髄腫に対する分子標的薬であるDaratumumab(DARA)投与患者では,赤血球膜表面上に微弱に発現しているCD38の影響により間接抗グロブリン試験(IAT)が偽陽性となり輸血前検査に影響を及ぼすため,IATに使用する赤血球はジチオスレイトール(DTT)処理を行う必要がある.今回我々は,DARA投与患者で不規則抗体を保有する2症例を経験した.症例1は,DARA投与前の不規則抗体検査で抗Eを検出したため,投与後の輸血検査の際,事前にE抗原陰性赤血球液(RBC)を選択することが可能だった.症例2は,投与前の不規則抗体スクリーニングは陰性だったが,投与後に5回のRBC輸血を行い5回目の輸血...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 68; no. 5; pp. 527 - 532
Main Authors 村上, 純, 道野, 淳子, 富山, 隆介, 雨野, 里奈子, 大槻, 晋也, 和田, 暁法, 仁井見, 英樹, 佐竹, 伊津子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 05.10.2022
日本輸血・細胞治療学会
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ISSN1881-3011
1883-0625
DOI10.3925/jjtc.68.527

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Summary:多発性骨髄腫に対する分子標的薬であるDaratumumab(DARA)投与患者では,赤血球膜表面上に微弱に発現しているCD38の影響により間接抗グロブリン試験(IAT)が偽陽性となり輸血前検査に影響を及ぼすため,IATに使用する赤血球はジチオスレイトール(DTT)処理を行う必要がある.今回我々は,DARA投与患者で不規則抗体を保有する2症例を経験した.症例1は,DARA投与前の不規則抗体検査で抗Eを検出したため,投与後の輸血検査の際,事前にE抗原陰性赤血球液(RBC)を選択することが可能だった.症例2は,投与前の不規則抗体スクリーニングは陰性だったが,投与後に5回のRBC輸血を行い5回目の輸血検査で抗Cが検出された.そのため不規則抗体を同定し適合血で交差適合試験を行うまでに赤血球試薬及びRBCに対し計3回のDTT処理が必要であり,輸血準備に長時間を要した.交差適合試験で併用している酵素法はDARAの影響を受けていない.今回経験したRh抗原に対する不規則抗体は日本人において検出率も高く,DARA投与患者の不規則抗体スクリーニングに酵素法を取り入れることはRh抗原に対する不規則抗体の適合血選択時の時短に繋がると考える.
ISSN:1881-3011
1883-0625
DOI:10.3925/jjtc.68.527