照射日を遅延させた赤血球製剤の採血後42日間保存の品質

2023年3月より,赤血球製剤の有効期間は採血後21日間から28日間に延長されたが,諸外国の36,43日よりも短い.さらなる有効期間延長により廃棄血の低減が期待される.輸血によるGVHD予防のために導入された血液に対する放射線照射は保存による赤血球製剤の品質低下の一因にもなる.今回,赤血球製剤の照射日を遅らせることが保存による品質低下を低減し,有効期間延長に寄与するか検討した.採血後2日目に照射した赤血球製剤の28日間保存の品質データを基準とし,採血後7,14,21日目に照射した群の28,35,42日間保存のデータと比較して35日間保存以降に基準の値が維持されるか検証した.保存に伴う溶血率の上...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 69; no. 6; pp. 624 - 633
Main Authors 紀野, 修一, 内藤, 祐, 生田, 克哉, 金敷, 拓見, 藤原, 満博, 秋野, 光明, 布施, 久恵, 若本, 志乃舞
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 20.12.2023
日本輸血・細胞治療学会
Subjects
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ISSN1881-3011
1883-0625
DOI10.3925/jjtc.69.624

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Summary:2023年3月より,赤血球製剤の有効期間は採血後21日間から28日間に延長されたが,諸外国の36,43日よりも短い.さらなる有効期間延長により廃棄血の低減が期待される.輸血によるGVHD予防のために導入された血液に対する放射線照射は保存による赤血球製剤の品質低下の一因にもなる.今回,赤血球製剤の照射日を遅らせることが保存による品質低下を低減し,有効期間延長に寄与するか検討した.採血後2日目に照射した赤血球製剤の28日間保存の品質データを基準とし,採血後7,14,21日目に照射した群の28,35,42日間保存のデータと比較して35日間保存以降に基準の値が維持されるか検証した.保存に伴う溶血率の上昇及びATP濃度の低下は照射を遅らせても低減されなかった.上清K+濃度は採血後21日目に照射した群のみ,35日間保存まで基準範囲内で維持された.赤血球変形能は採血後14及び21日目に照射した群で,35日間保存以降でも良好に維持された.以上より,赤血球製剤の照射日の遅延による35日間保存以降の品質保持または低下を抑制する効果は少なく,有効期間延長対策としての有用性は低いと考えられた.
ISSN:1881-3011
1883-0625
DOI:10.3925/jjtc.69.624