化学物質過敏症研究へのメタボロミクスの応用

「1. はじめに」空気質に起因し, シックハウス症候群との関連がいわれる疾患概念として化学物質過敏症がある. 化学物質過敏症の概念のスタートは, 1987年, 化学物質に曝露される機会の多い労働者を診察していたカレンが, 過去に大量の化学物質に一度に曝露された後, または長期間慢性的に化学物質の曝露を受けた後, 非常に微量の化学物質に再接触した際に見られる不快な臨床症状を, MCS(Multiple chemical sensitivity, 多種化学物質過敏状態)と提唱したことによる. わが国では, 固有の名称として「化学物質過敏症」と呼ぶことが多いが, カレンの提唱した概念と同一であるとは...

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Published in日本衛生学雑誌 Vol. 71; no. 1; pp. 94 - 99
Main Authors 加藤, 貴彦, 久田, 文, 東, 賢一, 欅田, 尚樹, 谷川, 真理, 藤原, 悠基, 中下, 千尋, 盧, 渓, 宮崎, 航, 内山, 巌雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人日本衛生学会 2016
日本衛生学会
Subjects
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ISSN0021-5082
1882-6482
DOI10.1265/jjh.71.94

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Summary:「1. はじめに」空気質に起因し, シックハウス症候群との関連がいわれる疾患概念として化学物質過敏症がある. 化学物質過敏症の概念のスタートは, 1987年, 化学物質に曝露される機会の多い労働者を診察していたカレンが, 過去に大量の化学物質に一度に曝露された後, または長期間慢性的に化学物質の曝露を受けた後, 非常に微量の化学物質に再接触した際に見られる不快な臨床症状を, MCS(Multiple chemical sensitivity, 多種化学物質過敏状態)と提唱したことによる. わが国では, 固有の名称として「化学物質過敏症」と呼ぶことが多いが, カレンの提唱した概念と同一であるとは必ずしも言えず, 「シックハウス症候群は化学物質過敏症の一つの病態」, 「化学物質過敏症はシックハウス症候群の重症化した病態」などの解説がなされている. しかし, 住居という空間を離れても, 化学物質過敏症のような健康障害が一定数存在することは事実であり, 患者と向き合う臨床現場では, 患者からも医師からも, その客観的診断方法の確立, 治療法の開発, 病態の解明が望まれている.
ISSN:0021-5082
1882-6482
DOI:10.1265/jjh.71.94