病原細菌の病原性遺伝子群の発現調節と病因に関する研究

病巣となる部位の微環境条件で必要な遺伝子群を発現させ, 自己の増殖の場を獲得してきている細菌が, いわゆる“病原菌”となっているといえる. 赤痢菌, 腸管出血性大腸菌, レンサ球菌を例に, 病原性に関与する遺伝子の発現がどのような巧みな仕組みで制御されているのかの研究成果を報告する. また, その調節の破綻が, 新規な感染症の出現となる例を劇症型レンサ球菌感染症に見ることができることを示す. 「初めに」病原細菌は多くの病原性に関与する遺伝子群を, バクテリオファージ, プラスミド, 形質転換等により水平伝播を介して獲得してきている. それら遺伝子群は常に発現されているわけではなく, 自己の増殖...

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Published in日本細菌学雑誌 Vol. 66; no. 1; pp. 1 - 5
Main Author 渡邉, 治雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本細菌学会 2011
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ISSN0021-4930
1882-4110
DOI10.3412/jsb.66.1

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Summary:病巣となる部位の微環境条件で必要な遺伝子群を発現させ, 自己の増殖の場を獲得してきている細菌が, いわゆる“病原菌”となっているといえる. 赤痢菌, 腸管出血性大腸菌, レンサ球菌を例に, 病原性に関与する遺伝子の発現がどのような巧みな仕組みで制御されているのかの研究成果を報告する. また, その調節の破綻が, 新規な感染症の出現となる例を劇症型レンサ球菌感染症に見ることができることを示す. 「初めに」病原細菌は多くの病原性に関与する遺伝子群を, バクテリオファージ, プラスミド, 形質転換等により水平伝播を介して獲得してきている. それら遺伝子群は常に発現されているわけではなく, 自己の増殖の場を感知したときに効率よく発現し, 結果的に宿主に傷害を引き起こすようになるとそれが発症に繋がると考えられている. 我々は, 宿主内に侵入した細菌が, その環境内でどのような機構で病原性に関与する遺伝子群を効率よく発現し, 自己の増殖の場を確保しているのか, またその結果がヒトの病気の発症にどのようにかかわるのかの分子機構を解明し, 発現を制御する方法を見いだすことを目的として研究を続けてきている.
ISSN:0021-4930
1882-4110
DOI:10.3412/jsb.66.1