災害に対する企業の事業継続能力に関する実態調査:和歌山県内事業場の業種別比較から

目的:本研究では和歌山県内の事業場のうち研究参加に同意が得られた事業場における事業継続計画(以下,BCP)策定の状況を明らかにし,今後のBCP策定に向けた支援を検討することを目的とした.対象と方法:和歌山産業保健総合支援センターの事業場リストから,無作為に1,583事業場を抽出し,無記名の質問票を郵送により配布した.質問票は,各事業場の概要,BCPの認知状況や策定状況,自然災害や新興感染症等による災害に対する事業継続能力,BCPの策定にあたっての困難などとした.業種により製造業(114社),ライフライン業(66社),その他の業種(207社)の3つに分類し,回答状況を比較分析した.結果:質問票は...

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Published in産業衛生学雑誌 Vol. 66; no. 5; pp. 192 - 201
Main Authors 藤吉, 朗, 生田, 善太郎, 平林, 愛子, 竹下, 達也, 田中, 智博, 森岡, 郁晴, 宮下, 和久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本産業衛生学会 20.09.2024
日本産業衛生学会
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ISSN1341-0725
1349-533X
DOI10.1539/sangyoeisei.2024-002-E

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Summary:目的:本研究では和歌山県内の事業場のうち研究参加に同意が得られた事業場における事業継続計画(以下,BCP)策定の状況を明らかにし,今後のBCP策定に向けた支援を検討することを目的とした.対象と方法:和歌山産業保健総合支援センターの事業場リストから,無作為に1,583事業場を抽出し,無記名の質問票を郵送により配布した.質問票は,各事業場の概要,BCPの認知状況や策定状況,自然災害や新興感染症等による災害に対する事業継続能力,BCPの策定にあたっての困難などとした.業種により製造業(114社),ライフライン業(66社),その他の業種(207社)の3つに分類し,回答状況を比較分析した.結果:質問票は412事業場から回収され,業種の回答があった387事業場(有効回答率:24.3%)を分析対象とした.BCPの認知状況は,「知っている」と回答した事業場がいずれの業種でも50%を超えていた.BCPの策定状況は,「すでに策定している・策定中である」と回答した事業場が製造業で39.5%,ライフライン業で34.8%,その他の業種で41.5%であった.ライフライン業では,緊急時における施設の備え,資金の備えで「特に行っていない」とする事業場が多く,中小企業BCPガイドにおいて,災害によって廃業に追い込まれる恐れが大きいとされる事業場が49%あった.BCPの策定にあたり困難なこととして,ライフライン業では,60.9%の事業場が「策定内容や検討方法が分からなかったこと」を挙げていた.また,その他の業種で「作成に必要な時間や人材の確保」と回答した事業場が44.2%と多かった.結論:BCPの認知は進んでいるが,策定は進んでいないこと,特にライフライン業ではBCP策定が遅れており,事業継続能力も低いことが明らかになった.BCPの策定にあたり,策定内容や方法が分からないとする事業場が多かったことから,策定時間を減らし,詳しい人材がいなくてもBCPが策定できるように,テンプレートを活用するなどの啓発が必要であることが示唆された.
ISSN:1341-0725
1349-533X
DOI:10.1539/sangyoeisei.2024-002-E