視覚障害を呈した副鼻腔嚢胞の臨床的検討

副鼻腔嚢胞は比較的頻度の高い疾患であり, 時に複視・視力障害などの視覚障害が生じ, 緊急手術が必要となる場合がある. 今回われわれは過去10年間に経験した副鼻腔嚢胞の症例において, 視覚障害に関する臨床的検討を行った. 2010年4月1日から2020年3月31日に当院で手術を施行した副鼻腔嚢胞のうち視覚障害を伴う12例を対象とした. 複視, 視力障害, 視野障害を視覚障害と定義した. 年齢, 性別, 成因, 症状, 嚢胞の部位, 初診科, 手術方法, 予後を診療録より後方視的に調査した. 症状別延べ人数は, 複視が7例, 視力障害が5例, 視野障害が2例であった. それぞれの主病変は上顎洞5例...

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Published in日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 Vol. 127; no. 2; pp. 121 - 128
Main Authors 磯野, 泰大, 岩村, 泰, 佐藤, 要, 畠山, 博充, 二宮, 啓彰, 松本, 悠, 山田, 将大, 鬼島, 菜摘, 桑原, 達, 折舘, 伸彦, 丹羽, 一友, 福井, 健太, 大氣, 大和, 大庭, 万優
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 20.02.2024
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
Subjects
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ISSN2436-5793
2436-5866
DOI10.3950/jibiinkotokeibu.127.2_121

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Summary:副鼻腔嚢胞は比較的頻度の高い疾患であり, 時に複視・視力障害などの視覚障害が生じ, 緊急手術が必要となる場合がある. 今回われわれは過去10年間に経験した副鼻腔嚢胞の症例において, 視覚障害に関する臨床的検討を行った. 2010年4月1日から2020年3月31日に当院で手術を施行した副鼻腔嚢胞のうち視覚障害を伴う12例を対象とした. 複視, 視力障害, 視野障害を視覚障害と定義した. 年齢, 性別, 成因, 症状, 嚢胞の部位, 初診科, 手術方法, 予後を診療録より後方視的に調査した. 症状別延べ人数は, 複視が7例, 視力障害が5例, 視野障害が2例であった. それぞれの主病変は上顎洞5例, 前部篩骨洞1例, 後部篩骨洞1例, 前頭洞1例, 蝶形骨洞3例であった. 複視7例中6例が発症後1カ月以上経過しており, 受診までの期間が長い傾向にあった. 視力障害5例中4例が2週間以内に治療介入をされており, 残りの症例は1カ月以上経過していた. 予後について, 複視は全例改善し, 視力障害は全盲症例を除き元の視力レベルにまで症状が改善する良好な経過であった. 発症から経過が長くても, 複視や重篤でない視力障害の場合は手術加療で改善が期待される. また, 重篤な視力障害を来している症例は早期診断および迅速な手術を含む加療が不可欠である. 視野障害患者の報告例は少ないため, 視力障害に至る前の治療介入ができるように眼科への啓発が必要だと考えられた.
ISSN:2436-5793
2436-5866
DOI:10.3950/jibiinkotokeibu.127.2_121