新規学習における前頭葉の役割

「はじめに」近年の脳科学の発展は, 大脳で営まれる情報処理の機構を詳細に解明し, 学習のメカニズムおよび脳損傷者に対するリハビリテーションの脳科学的効果を明らかにしょうとしてきた. その結果, 視覚系の情報処理は後頭葉が, 聴覚系の情報処理は側頭葉が, 触覚系の情報処理は頭頂葉が主に関与し, 前頭葉はこれらの複数の情報を総合的にまとめ, 判断し, 実行に移す過程に深く関わることが明らかとなってきた. すなわち, 前頭葉が複雑な情報処理の最終段階に関与し, その中でも特に前方に位置する前頭前野こそが, 注意集中力の原動力を担い, 特に新規な情報を取捨選択, 判断, 記憶し, 実行に移すという役割...

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Published in理学療法学 Vol. 36; no. 8; pp. 436 - 439
Main Authors 村上, 仁之, 武原, 格, 一杉, 正仁, 松田, 雅弘, 渡邊, 塁, 平塚, 乃梨, 渡邉, 修, 妹尾, 淳史, 来間, 弘展, 米本, 恭三, 井上, 正雄, 赤堀, 侃司, 林, 泰央, 今井, 豊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士学会 20.12.2009
日本理学療法士協会
Japanese Society of Physical Therapy
Subjects
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ISSN0289-3770
2189-602X
DOI10.15063/rigaku.KJ00005931414

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Summary:「はじめに」近年の脳科学の発展は, 大脳で営まれる情報処理の機構を詳細に解明し, 学習のメカニズムおよび脳損傷者に対するリハビリテーションの脳科学的効果を明らかにしょうとしてきた. その結果, 視覚系の情報処理は後頭葉が, 聴覚系の情報処理は側頭葉が, 触覚系の情報処理は頭頂葉が主に関与し, 前頭葉はこれらの複数の情報を総合的にまとめ, 判断し, 実行に移す過程に深く関わることが明らかとなってきた. すなわち, 前頭葉が複雑な情報処理の最終段階に関与し, その中でも特に前方に位置する前頭前野こそが, 注意集中力の原動力を担い, 特に新規な情報を取捨選択, 判断, 記憶し, 実行に移すという役割をもっていることが実証されてきた. 健常脳では, 閉眼時, 前頭葉皮質は大脳皮質全体平均より約20%, 血流量が多い(hyperfrontal pattern)1). 前頭部優位のこの活動パターンは, 意識, 発動性, 注意, 行動のプログラミング, 実行といった高次脳機能と深く関連する所見と考えられる.
ISSN:0289-3770
2189-602X
DOI:10.15063/rigaku.KJ00005931414