母親による児童虐待事案における量刑判断,伝統的性役割態度,非難の関連

児童虐待の防止が重要であること,ならびに児童虐待者に対する量刑に際しては市民の意識が重要であることは広く認識されている。しかし,児童虐待者に対する量刑と態度の関連を検討した研究は極めて少数にとどまる。そこで本研究は,性役割態度に関する知見および法学の議論に基づき,伝統的性役割態度が虐待者への非難を強め,非難が転じてより重い刑を導くという媒介モデルを検証した。807名から得られたデータを分析したところ,伝統的性役割態度の媒介効果は有意であった。しかし,仮説とは異なり,その方向性は負であり,平等志向的な性役割態度を有する人(つまり,伝統的性役割態度の得点が低い人)ほど,児童虐待者を非難し,長い刑を...

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Published inパーソナリティ研究 Vol. 32; no. 3; pp. 179 - 187
Main Authors 岩谷, 舟真, 井奥, 智大, 貞村, 真宏, 松木, 祐馬, 向井, 智哉, 湯山, 祥, 綿村, 英一郎, 田中, 晶子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本パーソナリティ心理学会 14.03.2024
Subjects
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ISSN1348-8406
1349-6174
DOI10.2132/personality.32.3.12

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Summary:児童虐待の防止が重要であること,ならびに児童虐待者に対する量刑に際しては市民の意識が重要であることは広く認識されている。しかし,児童虐待者に対する量刑と態度の関連を検討した研究は極めて少数にとどまる。そこで本研究は,性役割態度に関する知見および法学の議論に基づき,伝統的性役割態度が虐待者への非難を強め,非難が転じてより重い刑を導くという媒介モデルを検証した。807名から得られたデータを分析したところ,伝統的性役割態度の媒介効果は有意であった。しかし,仮説とは異なり,その方向性は負であり,平等志向的な性役割態度を有する人(つまり,伝統的性役割態度の得点が低い人)ほど,児童虐待者を非難し,長い刑を求めることが示された。この結果は,量刑研究においては平等が重要な考慮事項であることを示唆していると解釈された。
ISSN:1348-8406
1349-6174
DOI:10.2132/personality.32.3.12