唾液検査と質問紙調査を組み合わせた口腔保健指導プログラムの有効性評価

目的 : 成人の歯周病健診の実施率は低く, 歯周病を簡易にスクリーニングし, かつ保健指導の実効性をもつ健診法が求められている. そこで著者らは, 唾液検査と質問紙調査を組み合わせた簡易な口腔保健指導プログラムの開発を試みた. そして, そのプログラムが健診受診者の歯科医院への受診行動および歯と歯肉の健康のためのセルフケア行動の変容に繋がることの検証を目的に, まず小集団を対象として調査検討し, 本プログラムの有用性について検索した. 材料と方法 : 本研究の評価の対象者は, 四日市歯科医師会 (三重県) 主催の母子歯科保健事業に参加した児童の保護者110名のなかで, プログラム実施 (初回)...

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Published inThe Japanese Journal of Conservative Dentistry Vol. 59; no. 6; pp. 497 - 508
Main Authors 森田, 十誉子, 石井, 孝典, 山崎, 洋治, 冨士谷, 盛興, 湯之上, 志保, 武儀山, みさき, 千田, 彰, 細久保, 和美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 2016
日本歯科保存学会
The Japanese Society of Conservative Dentistry
Subjects
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ISSN0387-2343
2188-0808
DOI10.11471/shikahozon.59.497

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Summary:目的 : 成人の歯周病健診の実施率は低く, 歯周病を簡易にスクリーニングし, かつ保健指導の実効性をもつ健診法が求められている. そこで著者らは, 唾液検査と質問紙調査を組み合わせた簡易な口腔保健指導プログラムの開発を試みた. そして, そのプログラムが健診受診者の歯科医院への受診行動および歯と歯肉の健康のためのセルフケア行動の変容に繋がることの検証を目的に, まず小集団を対象として調査検討し, 本プログラムの有用性について検索した. 材料と方法 : 本研究の評価の対象者は, 四日市歯科医師会 (三重県) 主催の母子歯科保健事業に参加した児童の保護者110名のなかで, プログラム実施 (初回) から2カ月後に質問紙調査の回答が得られた75名 (男性1名, 女性74名, 平均年齢36.5歳) および8カ月後に質問紙調査と唾液検査に参加した61名 (男性1名, 女性60名, 平均年齢37.3歳) とした. 唾液検査では洗口吐出液の濁度およびヘモグロビン濃度を測定し, 質問紙調査では歯周病に関する自覚症状および口腔清掃習慣など11項目を評価した. これらの結果をレーダーチャートにまとめ, その場で歯科衛生士から対象者に個別に保健指導を行った. 結果 : 1. 過去1年間に歯科医院受診がなかった対象者のうち, プログラム実施2カ月後および8カ月後に, それぞれ11.8%および16.7%の対象者が歯科医院を受診した. 2. デンタルフロスの使用頻度は, プログラム実施2カ月後に有意に増加したが (p<0.05), 8カ月後では初回に比べ差異は認められなくなった. また, 歯と歯肉の健康のためのセルフケア行動を新たに実行した対象者は, 2カ月後で50.7%, 8カ月後で32.8%であった. 3. 洗口吐出液の濁度およびヘモグロビン濃度は, 初回に比べて8カ月後に有意に減少した (それぞれp<0.05, p<0.01). 4. 過去1年間に歯科医院への受診のなかった対象者では, 濁度と歯科医院への受診との間に有意な関連性が認められ, 歯科医院受診は濁度の高い集団で多かった (p<0.05). また, ヘモグロビン濃度と歯と歯肉の健康のための新たなセルフケア行動の実行との間に有意な関連性が認められ, 新たなセルフケア行動はヘモグロビン濃度の高い集団で多かった (p<0.01). 結論 : 唾液検査と質問紙調査を組み合わせた口腔保健指導プログラムの実施が, 歯科医院への受診行動および歯と歯肉の健康のためのセルフケア行動の変容に繋がる可能性があることが示唆された.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.59.497