日本におけるデング熱媒介蚊研究の概要
本邦でのデング熱の研究は, 台湾や沖縄での流行を契機に始められた. 九州以北の日本列島では, デング熱の大規模な流行や死亡例が知られていなかったため, 関心が薄かったが, 第二次大戦当時に熱帯の流行地へ赴いた人々の体験と, 1942/43年に西日本で起こったデング熱大流行(以下大流行と略す)が研究を駆り立てた. 近年でも, 近隣諸国はしばしば流行に見まわれている. その上, 出血性のdengue haemorrhagic feverが高い致命率をもたらすため, 危機感を与えている. 幸い国内での流行は最近経験していない. しかし, 邦人の海外旅行者が増加し, 本邦への輸入症例は今後減少するとは...
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Published in | Medical Entomology and Zoology Vol. 54; no. 2; pp. 135 - 154 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本衛生動物学会
15.06.2003
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ISSN | 0424-7086 2185-5609 |
DOI | 10.7601/mez.54.135 |
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Summary: | 本邦でのデング熱の研究は, 台湾や沖縄での流行を契機に始められた. 九州以北の日本列島では, デング熱の大規模な流行や死亡例が知られていなかったため, 関心が薄かったが, 第二次大戦当時に熱帯の流行地へ赴いた人々の体験と, 1942/43年に西日本で起こったデング熱大流行(以下大流行と略す)が研究を駆り立てた. 近年でも, 近隣諸国はしばしば流行に見まわれている. その上, 出血性のdengue haemorrhagic feverが高い致命率をもたらすため, 危機感を与えている. 幸い国内での流行は最近経験していない. しかし, 邦人の海外旅行者が増加し, 本邦への輸入症例は今後減少するとは思えない(矢部ら, 1997)し, 国際空港に感染蚊が入国して思いがけない患者の発生も予測できる(Jelineketal. , 1998). 加えて日本列島には多数の媒介蚊が分布を拡大しているから, 流行が起こっても不思議ではない. いったん起これば, その流行拡大の速度は著しく速く, 住民の恐怖を招くだろう. |
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ISSN: | 0424-7086 2185-5609 |
DOI: | 10.7601/mez.54.135 |