訪問歯科診療における抜歯に対する歯科医師の姿勢 : 某私立歯科大学卒業生を対象とした面接調査

訪問歯科診療における問題点について訪問診療経験者5名を対象に半構造化面接調査を行い,抜歯に関連する内容に着目し,質的に分析した.面接調査は事前に郵送した訪問診療に関する簡単な調査票とインタビューガイドをもとに行った.分析にはKJ法を用いた.訪問診療における抜歯に対する姿勢は,抜歯を行わないで経過観察ないし他の治療方法を検討する場合と,どうしても必要と判断されたときのみ実施する場合の2つに分かれた.後者では,その判断基準は,診療所内における基準と同じ場合と異なる場合があった.訪問診療における抜歯の判断基準として特徴的であったのは,介護者や入所施設側の理由を考慮すること,医師等との連携,薬剤の服用...

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Published in口腔衛生学会雑誌 Vol. 60; no. 2; pp. 170 - 177
Main Authors 山本, 祐子, 丸井, 英二, 堀口, 逸子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 口腔衛生学会 2010
日本口腔衛生学会
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ISSN0023-2831
2189-7379
DOI10.5834/jdh.60.2_170

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Summary:訪問歯科診療における問題点について訪問診療経験者5名を対象に半構造化面接調査を行い,抜歯に関連する内容に着目し,質的に分析した.面接調査は事前に郵送した訪問診療に関する簡単な調査票とインタビューガイドをもとに行った.分析にはKJ法を用いた.訪問診療における抜歯に対する姿勢は,抜歯を行わないで経過観察ないし他の治療方法を検討する場合と,どうしても必要と判断されたときのみ実施する場合の2つに分かれた.後者では,その判断基準は,診療所内における基準と同じ場合と異なる場合があった.訪問診療における抜歯の判断基準として特徴的であったのは,介護者や入所施設側の理由を考慮すること,医師等との連携,薬剤の服用,管理体制により決定すること,他の歯科医師の決定に従わざるをえない場合があることであった.訪問診療では高度な技術や熟練度よりも,柔軟かつ円滑にコミュニケーションを図る能力によって,医師,看護師,施設スタッフ,介護者との信頼関係構築と関連職種間の相互理解が必須であると考えられた.抗凝固・抗血小板薬等の管理においては医師と歯科医師が共通の認識をもつために日頃から十分な情報共有を行うことが必要不可欠である.本研究で得られた抜歯の判断に関連している背景の一つには,訪問診療を取り入れている臨床研修施設数の少なさや歯科医師の抜歯件数の減少がある.そのため,今後,研修施設等で訪問診療の機会が歯科医師に多く提供されることが必要である.
ISSN:0023-2831
2189-7379
DOI:10.5834/jdh.60.2_170