症状出現から間もなく心破裂に至ったたこつぼ症候群の1例

症例は70歳の女性.多発性骨髄腫,肺炎に対し当院血液内科にて入院加療中であった.免疫抑制薬使用中であり,肺炎加療は難渋し,長期入院を要していた.入院中に突然の胸背部違和感が出現し,12誘導心電図にてST変化を認め,急性冠症候群の疑いで当科へ診療依頼となった.心電図上ST変化を認めたものの,経胸壁超音波検査では心基部過収縮,心尖部無収縮のたこつぼ症候群様変化を認めた.急性冠症候群を臨床所見上否定できず,同日,緊急冠動脈造影検査を行った.その結果,冠動脈に有意狭窄は認められず,左室壁運動はたこつぼ症候群様変化を認めた.この時点で,たこつぼ症候群と診断した.集中治療室へ帰室し,その直後は全身状態安定...

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Published inShinzo Vol. 49; no. 10; pp. 1041 - 1047
Main Authors 明石, 嘉浩, 原田, 智雄, 御手洗, 敬信, 米山, 喜平, 大宮, 一人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.10.2017
日本心臓財団・日本循環器学会
Japan Heart Foundation
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.49.1041

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Summary:症例は70歳の女性.多発性骨髄腫,肺炎に対し当院血液内科にて入院加療中であった.免疫抑制薬使用中であり,肺炎加療は難渋し,長期入院を要していた.入院中に突然の胸背部違和感が出現し,12誘導心電図にてST変化を認め,急性冠症候群の疑いで当科へ診療依頼となった.心電図上ST変化を認めたものの,経胸壁超音波検査では心基部過収縮,心尖部無収縮のたこつぼ症候群様変化を認めた.急性冠症候群を臨床所見上否定できず,同日,緊急冠動脈造影検査を行った.その結果,冠動脈に有意狭窄は認められず,左室壁運動はたこつぼ症候群様変化を認めた.この時点で,たこつぼ症候群と診断した.集中治療室へ帰室し,その直後は全身状態安定して経過していたが,帰室約7時間後に突然の心停止に至った.心肺蘇生行ったが,反応に乏しく,蘇生開始約50分後に死亡確認に至った.原因究明のために病理解剖を行った.肉眼的所見では,心臓周囲に約50 mLの血性心膜液の貯留を認め,左室心筋心尖部に心筋内出血を認めた.出血は心外膜脂肪織内に及んでおり,さらに心筋に小さな穿孔部位が確認された.組織学的所見においても心尖部心筋内出血の所見であり,肉眼所見と一致した.これらの結果より,たこつぼ症候群およびそれに伴う心破裂と診断した.症状出現から間もなく心破裂に至った,稀なたこつぼ症候群と考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.49.1041