左前下行枝と回旋枝の慢性完全閉塞に右冠動脈の急性心筋梗塞を合併し, 一時血行動態が破綻したが迅速な血行再建により救命し得た1例

症例は69歳の男性. 胸痛で近医を受診し, 心電図上ST上昇を認め当院へ救急搬送された. 当院到着時JCSⅠ-1, 血圧65/30mmHgとショックバイタルで, 心電図上完全房室ブロック, 46bpmの房室接合部調律でⅡ, Ⅲ, aVF誘導でST上昇を認めた. 大動脈バルーンパンピング (Intra-aortic balloon pumping ; IABP), 一時的ペースメーカを挿入し冠動脈造影を施行した. 左前下行枝 (Left anterior descending coronary artery ; LAD) #6入口部, 回旋枝 (Circumflex branch ; Cx) #...

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Published inShinzo Vol. 48; no. 9; pp. 1074 - 1080
Main Authors 土谷, 健, 住野, 陽平, 小澤, 貴暢, 服部, 英二郎, 高宮, 智正, 徳永, 毅, 澤田, 三紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2016
日本心臓財団・日本循環器学会
Japan Heart Foundation
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.48.1074

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Summary:症例は69歳の男性. 胸痛で近医を受診し, 心電図上ST上昇を認め当院へ救急搬送された. 当院到着時JCSⅠ-1, 血圧65/30mmHgとショックバイタルで, 心電図上完全房室ブロック, 46bpmの房室接合部調律でⅡ, Ⅲ, aVF誘導でST上昇を認めた. 大動脈バルーンパンピング (Intra-aortic balloon pumping ; IABP), 一時的ペースメーカを挿入し冠動脈造影を施行した. 左前下行枝 (Left anterior descending coronary artery ; LAD) #6入口部, 回旋枝 (Circumflex branch ; Cx) #11が完全閉塞でLAD末梢は側副血行による血流を認めた. 右冠動脈 (Right coronary artery ; RCA) も#1で完全閉塞しており血栓性病変が疑われた. 心電図変化と造影所見からRCAが今回の責任病変と診断し同部位へ血行再建を開始した. 病変に前拡張をかけ遠位から3.5mmの薬剤溶出性ステントを2本留置し, 後拡張を行った. Door to balloon timeは49分であった. その後LADへガイドワイヤーの通過を試みたが, 病変が固く難渋した. 術中に心室細動が出現し電気的除細動200 Jで心拍再開した. 急性期の血行再建は継続困難と判断, 集中治療室へ入室し, 挿管, IABP管理, カテコラミン投与で循環動態を維持し気絶心筋の回復を待つ方針とした. その後, 循環動態は徐々に改善し第8病日IABP離脱, 第11病日抜管し神経学的後遺症なく回復した. 心臓超音波上も側壁を中心に壁運動が改善し, 第54病日2枝バイパス (左内胸動脈—LAD, 大伏在静脈—Cx) を施行, その後心機能は軽度改善し現在は自転車に乗れるまでに運動機能も改善した. 慢性完全閉塞に合併した急性心筋梗塞は非常に重症であり, 主要2枝の慢性完全閉塞に合併した急性心筋梗塞の長期の生存例は非常に稀である. 本症例はDoor to balloon timeの短縮と責任病変の適切な判断, 迅速な血行再建により救命することができた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.48.1074