酵母遺伝学を用いたがん化シグナルの解析と創薬への応用:ERK依存的細胞死誘導剤ACA-28の発見と新たながん治療戦略

「1. はじめに」 細胞増殖の制御は, 多彩なシグナル伝達機構により精緻に調節されている. そして酵母と高等生物では, 生命現象の基本的な分子機構は驚くほど保存されている. 細胞増殖を制御するシグナル伝達経路の中で最も重要なシグナル伝達経路の1つがMAPキナーゼ(mitogen-activated protein kinase; MAPK)経路である. MAPKシグナル伝達経路は, 酵母からヒトに至るあらゆる真核生物に存在しており, その構成因子や制御機構の多くが共通している. 一方, がん細胞の特質として異常な(制御不能な)増殖を示すことから, 細胞の増殖機構は細胞のがん化と密接な関連がある...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 139; no. 5; pp. 753 - 758
Main Author 杉浦, 麗子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.05.2019
日本薬学会
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ISSN0031-6903
1347-5231
DOI10.1248/yakushi.18-00185-3

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Summary:「1. はじめに」 細胞増殖の制御は, 多彩なシグナル伝達機構により精緻に調節されている. そして酵母と高等生物では, 生命現象の基本的な分子機構は驚くほど保存されている. 細胞増殖を制御するシグナル伝達経路の中で最も重要なシグナル伝達経路の1つがMAPキナーゼ(mitogen-activated protein kinase; MAPK)経路である. MAPKシグナル伝達経路は, 酵母からヒトに至るあらゆる真核生物に存在しており, その構成因子や制御機構の多くが共通している. 一方, がん細胞の特質として異常な(制御不能な)増殖を示すことから, 細胞の増殖機構は細胞のがん化と密接な関連がある. がん遺伝子やがん抑制遺伝子の発見に加え, 発がんや転移に係わる遺伝子変異などの情報が蓄積されるとともに, 次世代シーケンサーやゲノム編集などの飛躍的な技術進歩により, 発がんメカニズムの論理的基盤に立脚し, がん化シグナルの異常に狙いを定めた「分子標的抗がん薬」の創製が可能となった.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.18-00185-3