組換えカイコ繭由来ライソゾーム病治療薬の開発

「1. はじめに」ライソゾーム病(リソソーム病)は, 細胞内外の生体分子の分解代謝を行う細胞内小器官(オルガネラ)であるリソソームに含まれる酸性加水分解酵素(リソソーム酵素)又は補助因子をコードする遺伝子の変異に基づく, 一群の先天性代謝異常症である. この疾患群では, 酵素欠損により分解代謝されなくなった基質分子(多くは糖鎖や脂質)がリソソーム内に過剰蓄積し, 臓器不全と多様な全身性の臨床症状を伴うのが特徴である. ライソゾーム病は約40種類存在し, 発生頻度は疾患の種類や人種により異なるが, 出生児1-10万人に1人程度の希少疾患であり, 厚生労働省では特定疾患「難病」に指定されている....

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 138; no. 7; pp. 885 - 893
Main Authors 辻, 大輔, 真板, 宣夫, 日高, 朋, 伊藤, 孝司, 西岡, 宗一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.07.2018
日本薬学会
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ISSN0031-6903
1347-5231
DOI10.1248/yakushi.17-00202-3

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Summary:「1. はじめに」ライソゾーム病(リソソーム病)は, 細胞内外の生体分子の分解代謝を行う細胞内小器官(オルガネラ)であるリソソームに含まれる酸性加水分解酵素(リソソーム酵素)又は補助因子をコードする遺伝子の変異に基づく, 一群の先天性代謝異常症である. この疾患群では, 酵素欠損により分解代謝されなくなった基質分子(多くは糖鎖や脂質)がリソソーム内に過剰蓄積し, 臓器不全と多様な全身性の臨床症状を伴うのが特徴である. ライソゾーム病は約40種類存在し, 発生頻度は疾患の種類や人種により異なるが, 出生児1-10万人に1人程度の希少疾患であり, 厚生労働省では特定疾患「難病」に指定されている. かつては治らない病であったが, 1990年以降, 動物又は植物培養細胞への正常ヒトリソソーム酵素遺伝子導入株から分泌・精製される組換え酵素製剤を患者の静脈内に定期的(1-2週間隔)に継続投与する, 酵素補充療法(enzyme replacement therapy;ERT)が実用化され, 主に末梢症状を伴う9種の疾患に対して臨床応用されている.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.17-00202-3