後藤論文に対するEditorial Comment

後藤論文は, 急速に拡大し, かつ絶対瘤径が大きく, 広範囲に及ぶ胸部下行大動脈瘤に対する治療として胸部ステントグラフト内挿術(thoracic endovascular aortic repair;TEVAR)を選択し, 同定されたAdamkiewicz動脈を有する肋間動脈が瘤から分岐し, また, 明らかな側副血行路も認められなかったことから, 脊髄虚血予防の目的でスパイナルドレナージ(cerebrospinal fluid drainage;CSFD)を併用した症例の報告である. 術後合併症として急性硬膜下血腫が発生したが, CSFD併用TEVAR後の硬膜下血腫発生は詳細な報告がないことか...

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Bibliographic Details
Published inShinzo Vol. 45; no. 4; pp. 471 - 472
Main Author 川口, 聡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2013
日本心臓財団・日本循環器学会
Japan Heart Foundation
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.45.471

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Summary:後藤論文は, 急速に拡大し, かつ絶対瘤径が大きく, 広範囲に及ぶ胸部下行大動脈瘤に対する治療として胸部ステントグラフト内挿術(thoracic endovascular aortic repair;TEVAR)を選択し, 同定されたAdamkiewicz動脈を有する肋間動脈が瘤から分岐し, また, 明らかな側副血行路も認められなかったことから, 脊髄虚血予防の目的でスパイナルドレナージ(cerebrospinal fluid drainage;CSFD)を併用した症例の報告である. 術後合併症として急性硬膜下血腫が発生したが, CSFD併用TEVAR後の硬膜下血腫発生は詳細な報告がないことから臨床的にも貴重であり, 注意を喚起する意味でも本論文の価値は高い. TEVARによる対麻痺発生は, 通常の人工血管置換術に比較してその発生率は低い傾向にあるが, その理由については一定の見解はあるもののいまだに確信は得られていない. TEVARでは肋間動脈再建の手立てがなく, 以前にはバルーンや一時留置型のステントグラフトを用いた対麻痺予防の試みなどが行われたが1), 現在では多くの施設でMEPのモニタリングなどを施行して対麻痺への対応をしている.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.45.471