左室肥大症例における高感度トロポニンT上昇と左室機能および心不全イベントの関係

背景:近年,高感度トロポニンT(hs-cTnT)は,様々な疾患群において,心血管イベントの予後予測因子と報告されるようになったが,左室肥大を有する患者における,hs-cTnT上昇の臨床的意義についての検討は少ない.今回,われわれは左室肥大を有する患者において,hs-cTnTの上昇と,左室機能および心血管イベント発症の関係について検討した. 方法:対象は,2011年9月より2013年8月までに心臓精査のため当院外来を受診した428名のうち,心臓超音波検査で左室肥大を認めた218名.虚血性心疾患および心不全入院の既往例は対象から除外した.hs-cTnTの正常上限値である0.014 ng/mLをカッ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inShinzo Vol. 49; no. 4; pp. 352 - 359
Main Authors 川本, 健治, 山本, 和彦, 辻, 真弘, 櫻木, 悟, 片山, 祐介, 横濱, ふみ, 谷本, 匡史, 田中屋, 真智子, 市川, 啓之, 大塚, 寛昭, 西原, 大裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.04.2017
日本心臓財団・日本循環器学会
Japan Heart Foundation
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.49.352

Cover

More Information
Summary:背景:近年,高感度トロポニンT(hs-cTnT)は,様々な疾患群において,心血管イベントの予後予測因子と報告されるようになったが,左室肥大を有する患者における,hs-cTnT上昇の臨床的意義についての検討は少ない.今回,われわれは左室肥大を有する患者において,hs-cTnTの上昇と,左室機能および心血管イベント発症の関係について検討した. 方法:対象は,2011年9月より2013年8月までに心臓精査のため当院外来を受診した428名のうち,心臓超音波検査で左室肥大を認めた218名.虚血性心疾患および心不全入院の既往例は対象から除外した.hs-cTnTの正常上限値である0.014 ng/mLをカットオフ値とし,対象患者を2群に分類し(hs-cTnT高値群69例,hs-cTnT低値群149例),両群間で患者背景,血液・尿検査値,診察時血圧と脈拍および心臓超音波検査所見を比較した.hs-cTnT≥0.014 ng/mLとなる規定因子について,ロジスティック回帰分析を用いて解析した.2年間の観察期間内に発生した心血管イベントについて,Kaplan-Meier法を用いて両群間で比較した. 結果:ロジスティック回帰分析では,年齢65歳以上,左室重量係数,NT-proBNP≥400 pg/mLおよびE/e′≥15がhs-cTnT≥0.014 ng/mLに関係する因子であった.観察期間中,心不全入院は,hs-cTnT高値群で有意に多かった.心不全入院発生の規定因子についてCox回帰分析を行ったところ,hs-cTnT≥0.014 ng/mLは心不全発症の独立した規定因子であった(Hazard Ratio 9.277,95%CI:1.505 to 56.568,p=0.016). 結語:明らかな心疾患の既往のない左室肥大例において,hs-cTnTの測定は,より高リスクな状態にある患者を抽出するのに有効であった.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.49.352