心不全症状にて発症した腹部大動脈瘤-下大静脈瘻の1例

心不全にて発症し,救命し得た腹部大動脈瘤-下大静脈瘻の1例を経験したので報告する.症例は63歳男性.腰痛を認め,鎮痛剤にて軽減したが,その後も鈍痛が持続し,4日後より咳嗽,血痰,全身倦怠感が出現したため,当院救急外来を受診.急性心不全の診断で緊急入院となった.腹部に拍動性腫瘤を触知し,造影CTにて腹部大動脈瘤を認め,動脈相にて右腸骨静脈から下大静脈が造影された.腹部大動脈瘤の下大静脈穿通と診断し,緊急手術を行った.大動脈分岐部直上の右側壁に示指頭大の下大静脈との交通口を認め,同部を用手的に圧迫しながら閉鎖し,Y-graft置換を行った.術後経過は良好で,術後16日目退院となった.大動脈瘤-下大...

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Published inJapanese Journal of Vascular Surgery Vol. 19; no. 6; pp. 707 - 710
Main Authors 大村, 典子, 谷村, 信宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本血管外科学会 2010
日本血管外科学会
JAPANESE SOCIETY FOR VASCULAR SURGERY
Subjects
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ISSN0918-6778
1881-767X
DOI10.11401/jsvs.19.707

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Summary:心不全にて発症し,救命し得た腹部大動脈瘤-下大静脈瘻の1例を経験したので報告する.症例は63歳男性.腰痛を認め,鎮痛剤にて軽減したが,その後も鈍痛が持続し,4日後より咳嗽,血痰,全身倦怠感が出現したため,当院救急外来を受診.急性心不全の診断で緊急入院となった.腹部に拍動性腫瘤を触知し,造影CTにて腹部大動脈瘤を認め,動脈相にて右腸骨静脈から下大静脈が造影された.腹部大動脈瘤の下大静脈穿通と診断し,緊急手術を行った.大動脈分岐部直上の右側壁に示指頭大の下大静脈との交通口を認め,同部を用手的に圧迫しながら閉鎖し,Y-graft置換を行った.術後経過は良好で,術後16日目退院となった.大動脈瘤-下大静脈瘻は非常に稀な疾患で術前診断率は50~70%と低い.動脈瘤に心不全症状を認めた場合,動静脈瘻の存在を念頭において検査をすすめ,速やかに手術を行うことが重要である.
ISSN:0918-6778
1881-767X
DOI:10.11401/jsvs.19.707